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セイバー「問おう。貴方が私のご主人様(マスター)か?」士郎「え」
―――衛宮邸
セイバー「どうなのですか?」
士郎「あの……」
セイバー「はい」
士郎「えと……君が?」
セイバー「は?」
士郎「だから……今日から来ることになってる……」
セイバー「はい、サーヴァントです」
士郎「サーヴァント?」
セイバー「メイドのことです」
士郎「あぁ」
士郎「じゃあ、案内するよ」
セイバー「はい」
士郎「こっちが居間、キッチン」
セイバー「ふむ」
士郎「向こうが洗面所と風呂」
セイバー「なるほど」
士郎「で、ここはトイレ」
セイバー「……」
士郎「ここを真っ直ぐ行けば離れ」
セイバー「見取り図は?」
士郎「えっと……はい」
セイバー「どうも」
セイバー「意外と広いですね」
士郎「ああ。でも、実質住んでるのは俺だけなんだ」
セイバー「なぜですか?」
士郎「切嗣……俺の親父は随分前に死んじゃって、母親もいないんだ」
セイバー「それは……失礼なことを」
士郎「いいんだ」
セイバー「では、これからは私が家事全般をこなします!!」
士郎「ありがとう。家が広いから掃除とか大変だったんだ」
セイバー「それにしては行き届いている気もしますが」
士郎「ああ、実は―――」
桜「ただいまー。先輩、いますかぁー」
セイバー「曲者!?」
桜「だれですか!?」
セイバー「貴女こそ」
士郎「桜、言ってただろ。メイドさんだ」
桜「あ、ああ……」
セイバー「どうも。メイドです」
桜(こんな綺麗な家政婦さんなんて……!!)
士郎「桜っていって、幼馴染なんだ」
セイバー「そうですか。以後、お見知りおきを」
桜「は、はい」
士郎「いつも桜が掃除を手伝ってくれてたんだけど、流石に悪いって思って」
桜「そんなことないのに……」
セイバー「なるほど。これからは私に任せてください、桜」
桜(呼び捨てだし……)
士郎「よし、じゃあ後のことは任せていいかな?」
セイバー「はい。マスターの期待に沿えるよう尽力いたします」
桜「むぅ……」
士郎「お昼ご飯かって来てくれたんだろ?」
桜「はい」
士郎「じゃあ、一緒に作るか」
桜「は、はい!!」
桜(そうです。私はずっと先輩の傍にいたんです。家政婦に危機感を覚えるなんてどうかしてました)
セイバー「……」
セイバー「まずは……拭き掃除から」
セイバー「……」ゴシゴシ
セイバー「……」ゴシゴシ
セイバー「お腹すきました」
家事のできるセイバーさんなんて…
セイバー「ふぅ……こんなところでしょうか」
セイバー「次は……」
士郎「休憩にしようか」
セイバー「え?しかし……」
士郎「ご飯、できてるよ」
セイバー「ありがとうございます」
士郎「こっちだ」
セイバー「すいません。本来なら食事は私が作ることになっているのですが」
士郎「いいんだ。料理は好きだから」
セイバー「そうですか」
士郎「でも、メイドさんの料理も食べてみたいな」
セイバー「マスター」
士郎「ん?」
セイバー「私のことはセイバーで構いません」
士郎「そうか。なら俺のことも士郎でいいよ、セイバー?」
居間
桜「……」
セイバー「これは美味しいです、士郎」
士郎「ありがとう。そういってくれると嬉しいよ、セイバー」
セイバー「うん……いつもはこのように凝った料理はしないもので」
士郎「別に凝ってないよ」
セイバー「いえ。この舌の奥までしみこんで来るような味わい……特別な技術があるに違いない」
士郎「ないない」
セイバー「本当ですか?」
士郎「うん。あ、おかわりは?」
セイバー「頂きます」
桜「あの!!」
士郎「え?」
セイバー「なんですか、桜?」
桜「変ですよね?なんで家政婦さんが次のお茶碗を出すんですか?」
士郎「どうしたんだよ、桜。別にいいじゃないか」
桜「……」
セイバー「桜?」
桜「それも変です」
セイバー「は?」
桜「私はともかく、どうして先輩のことを呼び捨てにしているんですか?」
セイバー「それは士郎からの許可が」
桜「許可が出たからって、家政婦としての立場があるんじゃないですか?」
セイバー「え……?」
士郎「桜、どうして怒ってるんだ?」
桜「先輩も!!」
士郎「は、はい」
桜「主人と家政婦。互いの立場をきちんと理解してください!!」
士郎「わ、わかった……」
セイバー「……で、ではおかわりは控えます……」
セイバー「ご馳走様でした」
士郎「お粗末さまでした」
セイバー「洗い物は私が―――」
桜「私がします」
セイバー「そうですか」
士郎「セイバーはお風呂掃除してくれないか?」
セイバー「かしこまりました」
桜「……」
士郎「桜?」
桜「なんですか?」
士郎「言いすぎじゃないか?俺は別におかわりぐらいいいと思うぞ?」
桜「だって……」
士郎「……」
桜「ごめんなさい……」
士郎「いいけど……」
浴室
セイバー「立派な浴槽ですね」ゴシゴシ
セイバー「……」ゴシゴシ
セイバー「三時のおやつはあるのでしょうか……」
桜「―――セイバーさん?」
セイバー「はい?」
桜「あの……さっきはごめんなさい」
セイバー「いえ。桜の言うとおり、給仕が家人の許可なく腕を差し出すほうが悪いのです」
桜「……」
セイバー「なんですか?」
桜「いえ……」
桜(そうよ……別に焦ることなんてない。先輩はずっと私と一緒だったんだから)
セイバー「桜?」
桜「あの……セイバーさんは何時までここに?」
セイバー「は?住み込みなので24時間、ここで過ごしますが。契約期間は半年です」
桜「え……!?」
セイバー「何を驚かれているのですか?」
桜「だって普通は交代制じゃあ……」
セイバー「我が経営者が中々の悪人でして、人件費削減とかでこのような体制なのです」
桜「なんで辞めないんですか!!そんなのブラックですよ!!」
セイバー「お給料がよくて」
桜「……」
セイバー「桜?」
桜(ということは……先輩とセイバーさんはずっと一緒……)
セイバー『士郎……今日は夜のご奉仕もさせていただきます』
士郎『ありがとう……』
セイバー『ぁ……ん……』
桜「―――だめぇぇ!!!」
セイバー「え?この『バスマジック凛』は使用不可ですか?いい洗剤なのですが」
桜(まずい……先輩をとられちゃう……!!)
セイバー「困りましたね」
桜「こうなったら……!!」
セイバー「あ、桜?」
セイバー「……ふむ」
セイバー「とにかく清掃を終わらせましょう」
セイバー「えーと……」
セイバー「排水溝も……」
セイバー「ん?」
セイバー「……」
セイバー「士郎……」
セイバー「お風呂では止めるように言っておいたほうがいいですね」
セイバー「……」ゴシゴシ
居間
士郎「うーん……セイバーがいるからやることがないなぁ」
桜「先輩!!」
士郎「どうした?」
桜「私もここに住みます!!」
士郎「駄目だ。お姉ちゃんが怒るだろ」
桜「でも……!!」
士郎「どうしたんだよ、さっきから変だぞ?」
桜「だって……だって……」
士郎「桜?」
桜「……じゃあ、姉さんも一緒ならいいですか?」
士郎「な!?」
桜「相談してきます!!」
士郎「馬鹿!!桜!!!そんなことしたら俺の身が持たない!!」
士郎「……いっちまった……」
セイバー「士郎」
士郎「あ、お疲れ様。お茶いれるな」
セイバー「どうも」
士郎「大変だったろ。うちの風呂結構広いからな」
セイバー「あの……」
士郎「ん?」
セイバー「申し上げにくいのですが」
士郎「どうしたんだ?」
セイバー「お風呂でするのは控えたほうが……いいかと……」
士郎「……」
セイバー「その……取るのが……」
士郎「あの……え……?」
セイバー「きっと今までは桜がやっていたために気づかなかったのでしょうが……その……残るのです。あれは」
士郎「……」
セイバー「……」
セイバー「……」ズズッ
桜「先輩!!」
セイバー「桜。おかえり―――おや、そちらの女性は?」
桜「私の姉さんです」
ライダー「どうも」
セイバー「似ても似つきませんね」
桜「その……実の姉ではないんです」
ライダー「はい」
セイバー「そうですか。本日は何用で?」
ライダー「それが私も詳しくは……」
桜「セイバーさん!先輩は?!」
セイバー「部屋に居ると思います」
桜「姉さん、いきましょう!!」
ライダー「桜、待ちなさい」
セイバー「……」ズズッ
士郎の自室
士郎「……はぁ」
桜「せんぱーい!!」
士郎「桜か?」
桜「……あの」
士郎「あ……」
士郎(桜も知ってるんだよな……きっと……)
桜「姉さんをつれてきました」
士郎「え?!」
ライダー「お久しぶりです」
士郎「あ……うん……」
ライダー「……」
桜「あの……姉さんと一緒になら住んでもいいんですよね?」
ライダー「えぇ?!?!」
士郎「だめだ!!」
桜「どうしてですか?!」
士郎「いや……その……」
ライダー「……私も結構です」
桜「姉さん!!」
ライダー「桜……自力でどうにかするべきです」
桜「でも……住み込みのメイドさんになんて……どうやって……」
ライダー「でしたら……」ゴニョゴニョ
桜「ふんふん……」
士郎「……?」
ライダー「そうすればきっとメイドのほうから音を上げます」
桜「や、やってみる」
ライダー「その意気です」
士郎「ライダー……」
ライダー「士郎……失礼します」
桜「……?」
桜「先輩?」
士郎「ん?」
桜「姉さんとなにかあったんですか?」
士郎「え……いや」
桜「そうですか」
士郎「……」
桜「さてと……」
士郎「どうした?」
桜「セイバーさんは掃除を担当するんですよね?」
士郎「ああ」
桜「わかりました」
士郎「桜?」
桜「……」
居間
セイバー「……」モグモグ
セイバー「この菓子は美味だ」
桜「セイバーさん、ちょっといいですか?」
セイバー「なんでしょう?」
桜「こっちへ」
セイバー「はい」
桜「ここ、掃除したんですよね?」
セイバー「ええ」
桜「……じゃあ、この埃はなんですか?」
セイバー「え……」
桜「これで掃除したって言えるんですか?」
セイバー「申し訳ありません。すぐに―――」
桜「自分の仕事もできずに食事だけはきっちり取るなんて何を考えているんですか?」
セイバー「返す言葉もありません」
セイバー「……」ゴシゴシ
セイバー「ふぅ……これで」
桜「セイバーさん」
セイバー「はい?」
桜「こっちへ」
セイバー「はい」トテトテ
桜「この部屋も掃除したんですよね?」
セイバー「はい。ここは念入りに……」
桜「エアコンのフィルター、埃だらけですけど?」
セイバー「あ……」
桜「これで掃除したって言えるんですか?」
セイバー「見落としていました」
桜「プロなんでしょう?こんなミスがあってもいいと思ってるんですか?」
セイバー「はい……申し訳―――」
桜「謝る前に掃除をしてください」
セイバー「……」ゴシゴシ
セイバー「うむ……完璧です」
セイバー「さてと……」
桜「セイバーさん?」
セイバー「は、はい!!」
桜「こっちへ」
セイバー「は、はい……」トテトテ
桜「お風呂掃除、したんですよね?」
セイバー「はい……なにか問題でも?」
桜「ここ。水垢がとれてません」
セイバー「いや……これは中々とれなくて……」
桜「綺麗にするために掃除ってするんですよね?汚いままなのに掃除っていうんですか?」
セイバー「す、すぐにとりかかります……」
桜「急いでくださいね」
セイバー「は、はい……かしこまりました……」
セイバー「ふぅ……ふぅ……」ゴシゴシ
士郎「あ、セイバー?」
セイバー「士郎」
士郎「なにやってんだよ?」
セイバー「いえ、水垢が落ちなくて……」
士郎「もう休憩にしよう」
セイバー「いえ……士郎に気持ちよくなってもらうためにがんばります」
士郎「セイバー……」
セイバー「……」ゴシゴシ
士郎「今から買出しにいってくるけど、留守番頼めるか?」
セイバー「はい」
士郎「ごめんな」
セイバー「いえ」
士郎「……」
セイバー「……」ゴシゴシ
セイバー「落ちました……」
セイバー「マジック凛は万能ですね」
セイバー「さてと……」
ピンポーン
セイバー「ん?」
セイバー「お客様でしょうか……」トテトテ
セイバー「どちら様ですか?」
『貴女は?』
セイバー「今日からここで住み込みで働いている者です」
『ああ、そう。とりあえずあけてちょうだい』
セイバー「しかし……」
『私は知り合い』
セイバー「わかりました」
イリヤ「お兄ちゃんは?」
セイバー「お兄ちゃん……士郎のことですか?」
イリヤ「そう、士郎のこと」
セイバー「今は買い出しにでかけております」
イリヤ「ふぅん」
セイバー「……なにか?」
イリヤ「じゃ、上がらせて」
セイバー「失礼ですが、貴女は?」
イリヤ「イリヤ」
セイバー「いえ……士郎との関係を聞きたいのですが」
イリヤ「従妹」
セイバー「しかし……あなたはどう見ても日本人では……」
イリヤ「うるさいわね。侍女のくせに生意気よ?」
セイバー「む……申し訳ありません。口が過ぎました」
イリヤ「よろしい」
セイバー(なんて高圧的な人だ……)
セイバー「……」
イリヤ「ねえ?」
セイバー「はい?」
イリヤ「なんで座ってるの?」
セイバー「え?」
イリヤ「普通、侍女は主人が寝るまで立っているものでしょ?」
セイバー「そ、そうですか……」
イリヤ「なにもわかってないのね?」
セイバー「はい……日が浅いもので」
イリヤ「ほら、起立」
セイバー「はい」
イリヤ「両手は臍のあたりで重ねて」
セイバー「こうですか?」
イリヤ「それでいいの。主人がなにかいうまでそうしていなさい」
セイバー「は、はい……」
士郎「―――ただいま」
イリヤ「おにーちゃーん!!!」ダダダッ
士郎「イリヤ!?どうしたんだよ?」
イリヤ「きちゃった」
士郎「来るときは連絡してくれないと」
イリヤ「だって、お兄ちゃんをびっくりさせたかったんだもーん」
士郎「そうか」
セイバー「お帰りなさい、士郎」
士郎「ただいま、セイバー」
イリヤ「今日は泊まってもいいでしょ?」
士郎「駄目だ。俺がまた怒られるだろ?」
イリヤ「士郎を怒るやつを私が怒るから安心して」
士郎「それしたら余計に俺が怒られるんだって」
セイバー「……」
士郎「さてと料理をつくるか」
イリヤ「あれ?この人がつくるんじゃないの?」
士郎「え?」
セイバー「……」
イリヤ「だって侍女でしょ?」
士郎「そうだけど……」
イリヤ「食事の用意なんてこの人に任せて、お兄ちゃんは私と遊ぼうよ」
士郎「いや……そういうわけにも」
セイバー「構いません」
士郎「え?」
セイバー「私がします」
イリヤ「ほら、こういってるし」
士郎「……じゃあ、頼めるか?」
セイバー「はい。腕によりをかけます」
士郎「それじゃあ……お願い、セイバー」
―――二時間後
イリヤ「……」
士郎「……」
セイバー「あの……」
イリヤ「まずいわ」
セイバー「……っ」
イリヤ「なにこれ?ここまで素材の味を貶めることができるなんて初めて知ったんだけど」
士郎「イリヤ!!」
セイバー「……申し訳ありません」
イリヤ「魚もこれ……ただ焼けばいいってわけじゃないわよ?」
セイバー「……」
イリヤ「味も極端。辛いか薄いか。こんなの犬だってしかめっ面になるわ」
セイバー「……」ウルウル
イリヤ「侍女に向いてないわ、貴女」
士郎「イリヤ!!言いすぎだ!!」
イリヤ「今日は帰る」
士郎「送っていくよ」
イリヤ「うん」
セイバー「……」
イリヤ「……ふん」
士郎「セイバー、俺が片付けるから……」
セイバー「いえ……全て私がやります」
イリヤ「当然でしょ」
士郎「イリヤ!!」
イリヤ「……いこ、お兄ちゃん」
士郎「ああ」
セイバー「……」モグモグ
セイバー「……」ウルウル
セイバー「……まずい」ポロポロ
士郎「ただいま」
セイバー「おかえりなさい、士郎。お風呂の準備を始めたところです」
士郎「セイバー……イリヤはあの、本当のお嬢様でさ……その……」
セイバー「さ、士郎。準備が整うまでしばらくお待ちください」
士郎「セイバー……」
セイバー「外は冷えたでしょう?」
士郎「……」
セイバー「くつろいでいてください。私は寝具の用意をしますので」
士郎「ありがとう……」
セイバー「それでは失礼します」
士郎「……」
浴室
士郎「はぁ……」
士郎「セイバー……無理してたな……」
士郎「イリヤもきついところがあるからなぁ……」
士郎「……」
セイバー『士郎?湯加減は?』
士郎「え、うん。ちょうどいいよ」
セイバー『着替えを置いておきます』
士郎「ありがとう」
士郎「……セイバー!!」
セイバー『は、はい!?』
士郎「セイバーもお風呂に入っていいから。というか、いつでもいい。俺より先にはいっても全然問題ない」
セイバー『……ありがとうございます』
士郎「それだけ」
セイバー『はい』
士郎の自室
士郎「布団まで……」
士郎「……」
士郎「寝よう……」
士郎「……セイバーかぁ……」
士郎「綺麗だよな……」
士郎「……」
士郎「かわいいし……何事にも一生懸命なのは今日だけでもわかったし」
士郎「……」
士郎「セイバー……すぅ……すぅ……」
翌朝
士郎「ん……」
士郎「四時か……」
士郎「顔、洗おう……」
―――洗面所
士郎「ん?」
士郎「浴室の電気が……」
士郎「消し忘れて―――」
ガララ
セイバー「ふぅ……」
士郎「は―――」
セイバー「し、しろう……」
士郎「あ……あの……」
セイバー「あ……えと……私……朝風呂がすきで……」
士郎「ごめん!!!」ダダダッ
居間
士郎「はぁ……はぁ……」
士郎「全部……みちゃった……」
士郎「……っ」
士郎「……なんで!!なんで気づかなかった!!」
セイバー「あ、あの……」
士郎「わぁ!?!?」
セイバー「申し訳ありません……いつでもいいという言葉に甘えてしまって……その……」
士郎「い、いや……きにするな!!」
セイバー「しかし……」
士郎「……」
セイバー「士郎……」
士郎「ごめん!!ちょっとトイレ!!」
セイバー「あ……」
セイバー「朝ごはん……」
セイバー「士郎?」
士郎『―――な、なんだ!?』
セイバー「いえ……かなり長いようなので体調でも悪いのかと……」
士郎『大丈夫!!もうちょっとだから!!』
セイバー「わ、わかりました。あの、庭の掃除をしてきます」
士郎『うん!!』
セイバー「……」
セイバー「士郎……大丈夫でしょうか?」
セイバー「よし」
セイバー「今日も一日、がんばらなければ」
ふぅ…
庭
セイバー「……」ザッザッ
セイバー「……ん?」
大河「ふわぁぁ……」
セイバー「……」
大河「……誰?」
セイバー「貴女こそ。堂々と敷地内に入ってくるとは無礼です」
大河「失礼ね。私は士郎の姉的存在よ?」
セイバー「姉?」
大河「そうよ」
セイバー「士郎に姉がいるなど初耳ですが」
大河「あなたこそ、誰なの?」
セイバー「私は昨日からここで働かせていただいているセイバーというものです」
大河「あー!!メイドさんかぁ!!士郎が言ってた!」
セイバー「なにか御用ですか?」
大河「朝ごはんを食べにきたのよぉ」
セイバー「いつも朝食をとりに?」
大河「週に5日ぐらいかなぁ」
セイバー「そうですか」
大河「じゃ、掃除がんばってね」
セイバー「わかりました」
大河「……ところで」
セイバー「なにか?」
大河「士郎のこと好きになっちゃだめよ?」
セイバー「え?!」
大河「士郎にはもう将来を誓い合った人がいるんだから」
セイバー「そうなのですか!?」
大河「うん」
セイバー「それは……しりませんでした」
大河「だから、くれぐれも惚れちゃだめよ?惚れるだけ損だから」
居間
セイバー「庭掃除終わりました」
士郎「あ、うん……お、お、おつかれ……」
セイバー「士郎……あの、今朝はお見苦しいものを……見せてしまい……大変申し訳ありません」
士郎「な、なにいってるんだ!!そんなことない!!」
セイバー「え?」
士郎「あ、いや……その……綺麗……だったし」
セイバー「は?」
士郎「あ……俺なにいってんだ!?ごめん!!忘れてくれ!!」
セイバー「はい……」
大河「おかわり!!!」
士郎「はいはい……。セイバーの分はそれな」
セイバー「ありがとうございます」
士郎「おかわりもしていいから」
セイバー「はい」
士郎「それじゃあ、学校に行って来るよ」
セイバー「お気をつけて」
士郎「さっき渡した紙にやってほしいことは全部書いてるからな」
セイバー「はい」
士郎「行ってきます」
セイバー「行ってらっしゃいませ」
セイバー「……」
セイバー「さて……」
セイバー「……」ペラッ
セイバー「居間の掃除に……買出し……」
セイバー「これは全部午前中に終わってしまいますね……」
セイバー「幸いこの屋敷は広い。全てを掃除するだけで一日が終わるでしょう」
セイバー「始めましょうか」
居間
セイバー「……」ゴォォォ
セイバー「ん?」
セイバー「これは……お弁当……」
セイバー「二つありますね……」
セイバー「もしや……私の分でしょうか?」
セイバー「士郎……本当に優しい……」
セイバー「……」キョロキョロ
セイバー「……」パカッ
セイバー「これは……?!」
セイバー「……」ゴクリ
セイバー「……」キョロキョロ
セイバー「……」モグモグ
弁当…嫌な予感がするな…
セイバー「ふぅ……居間の掃除はこれぐらいでいいでしょう」
セイバー「次は離れでも……」
トゥルルルル
セイバー「電話ですね」トテトテ
セイバー「はい、衛宮です」
士郎『セイバー、悪いんだけど。居間のほうにお弁当箱が二つなかったか?』
セイバー「はい、ありました」
士郎『ごめん。それ俺と桜の昼飯なんだ』
セイバー「え……?」
士郎『お昼までにいいから学校に届けてくれないか?学校までの道は今からいうから』
セイバー「あ、あの……」オロオロ
士郎『なんだ?もうすぐ休み時間終わるから早くしてほしいんだけど』
セイバー「あ、いえ。はい。メモを用意しました……」
士郎『じゃあ、まずな―――』
セイバー(なんて失態を……!!)
士郎『―――わかったか?』
セイバー「な、なんとか」
士郎『それじゃあ、悪いけど届けてくれ』
セイバー「は、はい!!」
ガチャン
セイバー「……」
セイバー「……」トテトテ
セイバー「……半分食べてしまった」
セイバー「……考えてみれば、私の分が弁当箱に詰まっているはずがない」
セイバー「……」
セイバー「くそっ……!!」
セイバー「作らないと……!!」
セイバー「私が士郎のお弁当を」オロオロ
学校
士郎「そろそろかな……」
セイバー「し、しろー……」
士郎「あ、セイバー。迷わなかったか?」
セイバー「は、はい……残念なことに」
士郎「え?」
セイバー「いえ……」
「なんだ、すげー美人なひとがいるけど」
「メイドさんだって」
「まじかよ」
セイバー「……」オロオロ
士郎「あ、ごめん。ここじゃ目立つからな」
セイバー「いえ……」
士郎「ありがとう、セイバー」ニコッ
セイバー「は、はい……では、失礼します……」
昼休み 道場
士郎「桜」
桜「あ、先輩」
士郎「はい、お弁当」
桜「先輩、ありがとうございます」
士郎「今日は俺の番だからな」
桜「先輩のお弁当、いつもおいしくて大好きです」
士郎「桜もかなり腕をあげたからな。そろそろ免許皆伝だ」
桜「そ、そんなことありません。先輩にはもっと色んなことを学びたいです!!」
士郎「そうか?」
桜「はい」
士郎「それじゃ、食べるか」
桜「はい」パカッ
士郎「今日のは自信作―――」パカッ
桜「……なにこれ?」
ああ・・・
やめてあげて・・・
衛宮邸
セイバー「……」ソワソワ
セイバー(見てくれは悪いですが……味は……)
セイバー「悪いんですよね……」
セイバー「……こわい」
セイバー「どうしたら……このままでは……」
士郎『このサーヴァントだめだ。使えない』
桜『クビでいいんじゃないですか?』
イリヤ『メイドの風上にもおけないわね、この体たらくじゃ』
セイバー「……」ウルウル
セイバー「あぁぁ……」ポロポロ
セイバー「私は……なんてことを……してしまったんでしょうか……」ポロポロ
士郎「―――ただいま」
セイバー「……?!」ビクッ
セイバー.....
士郎「セイバー?」
セイバー「し、しろう……!!」
士郎「セイバー……このお弁当……」
セイバー「申し訳ありません!!!あの!!」
士郎「わざわざ作ってくれたのか?」
セイバー「えと……」
士郎「間違って食べちゃったんだろ?」
セイバー「士郎……」
士郎「それならそうといってくれればいいのに。学校には購買もあるし食堂もあるんだから」
セイバー「士郎……あの……」ウルウル
士郎「料理はこれから練習しような?」
セイバー「はい……はい……」ポロポロ
士郎「うん。でも、セイバーはきっと上達するよ。真面目だし、何事にも一生懸命だから」
セイバー「し、ろぉ……」ポロポロ
士郎「お疲れ様。家の中、すごいピカピカじゃないか。すごいな」
これは惚れる
士郎優し過ぎマジイケメン
士郎が良い奴で助かった。
セイバー「しろう……」
士郎「セイバー、俺ちょっと出かけてくるけど、しばらく留守番しててくれ」
セイバー「……」ゴシゴシ
セイバー「はい!!任せてください!!」
士郎「うん。お願い」
セイバー「……」
セイバー(士郎……)
セイバー「……」
セイバー「ここに来れてよかった……」
桜「―――セイバーさん?」
セイバー「あ、桜。お帰りなさい」
桜「ちょっとお話いいですか?」
セイバー「はい」
桜「―――なんですか、この残飯?」パカッ
セイバー「……」
いやああいじめないであげて!
桜「セイバーさんが作ったんですよね?」
セイバー「はい……」
桜「こんなものを先輩に食べさせようとしたんですか?」
セイバー「……」
桜「どうなんです?」
セイバー「そ、そのとおりです……」
桜「はぁ……信じられません」
セイバー「……っ」
桜「何かいいたいことは?」
セイバー「申し訳ありません……」
桜「謝るようなことをどうしてしようと思ったんですか?」
セイバー「……」
桜「セイバーさん?」
セイバー「すいません」
桜「謝罪はいいです。理由をきかせてください。どうしてこんなお弁当を作ろうと思ったんですか?」
セイバー「あの……その……」
桜「……」
セイバー「……すいません」
桜「セイバーさんは台所に立たなくてもいいです。むしろ立たないでください」
セイバー「……はい」
桜「全く……こんなメイドを置いておくメリットなんてどこにあるんでしょうか」
セイバー「……」ウルウル
セイバー「……士郎は……ゆるして……くれました……」ウルウル
桜「……なんていいました?」
セイバー「士郎は……ゆるしてくれましたっ!」ポロポロ
桜「なにそれ?もう恋人気取りですか?」
セイバー「……!?」
桜「最低ですね……メイドのくせに」
セイバー「……っ!!」ダダダッ
桜「……」
街
セイバー「……」ポロポロ
セイバー「ぐすっ……」ゴシゴシ
セイバー「私は……どうして逃げてしまったんでしょうか……」
セイバー「……」
ライダー「セイバー?」
セイバー「あ……」
ライダー「どうかしましたか?」
セイバー「いえ……」
ライダー「桜に苛められましたか?」ニヤニヤ
セイバー「ち、ちがいます!!」
ライダー「……」
セイバー「……なんですか?」
ライダー「少し、お茶でもどうですか?」
セイバー「え?」
喫茶店
ランサー「おまちどう」
ライダー「どうも」
セイバー「……」
ライダー「ここのコーヒーは絶品です」
セイバー「……あの話とは?」
ライダー「士郎のことで」
セイバー「……?」
ライダー「まだ二日目の貴女にこういうことをいうのは気がひけますが……士郎にはあまり近づかないようにしていただきたい」
セイバー「え……?」
ライダー「私も……以前、間違いを犯しそうになったことがあります」
セイバー「間違い……?」
ライダー「士郎には将来を誓った人がいるのに……。だからは私はもう極力、士郎には会わないようにしています」
セイバー「そう……なんですか」
ライダー「士郎は優しいですからね。すぐに好きになってしまう。いけないとはわかっているのに」
セイバー「あの……何がいいたいのですか?」
ライダー「好きになってしまう前に出て行ってください」
セイバー「……?!」
ライダー「ずっといれば恐らく貴女も士郎の人柄に惚れこんでしまうでしょう……。でも、それは士郎を困らせるだけ」
セイバー「……」
ライダー「そして、貴女も虚しいだけです」
セイバー「はい……」
ライダー「私が言いたかったのはそれだけです」
セイバー「……でも」
ライダー「……」
セイバー「私は士郎に仕えたい。今日、心からそう思えました」
ライダー「貴女……」
セイバー「士郎の幸せを心から願い……そして傍で支えたい……そう思うのはいけませんか?」
ライダー「……好きにすればいい。後悔するのは貴女です」
セイバー「後悔なんてするはずがない。私はメイドとして士郎のお傍に仕えるだけですから」
衛宮邸
セイバー「……ただいま戻りました」
士郎「セイバー!!」
セイバー「あ……」
士郎「どこ行ってたんだ、心配したじゃないか」
セイバー「申し訳ありません」
士郎「じゃあ居間で―――」
セイバー「折角ですが、まだ掃除が残っていますので」
士郎「え……あ、そうなのか?」
セイバー「はい」
士郎「じゃあ、また晩御飯になったら―――」
セイバー「これからは晩御飯も結構です」
士郎「なんでさ?」
セイバー「家人の者が食べ終えてから、食事にします」
士郎「セイバー……?」
夜
士郎「セイバー?」
セイバー「はい?」
士郎「寝ないのか?」
セイバー「士郎が就寝した後に寝ます」
士郎「そう……」
セイバー「それまで縫い物を……いっ!?」
士郎「あ、大丈夫か?!」
セイバー「平気です」
士郎「見せてみろ」
セイバー「士郎はもう就寝を」
士郎「セイバー、いいから」
セイバー「……やめてください!!」
士郎「え……」
セイバー「私はメイドです。優しくされても困ります」
士郎「セイバー……なんでさ?」
セイバー「……っ」
士郎「昼間のことなら……俺……」
セイバー「……」
士郎「ごめん……セイバーが困るなら……もう、何も言わない」
セイバー「あ……」
士郎「おやすみ……」
セイバー「……」
セイバー「士郎……」
セイバー「……」ウルウル
セイバー「堪えろ……私はメイドだ……」
セイバー「マスターとメイドでしかないんだ……!!」
翌朝
士郎「セイバーは?」
桜「庭掃除をしていました」
士郎「そう……」
桜「先輩?」
士郎「いや、なんでもない」
桜「そうですか」
士郎「はい、これお弁当」
桜「いいんですか?今日は私の番だったのに」
士郎「昨日は結局食べられなかったからな」
桜「ふふ……」
士郎「じゃ、早く食っちまおう」
桜「はい」
玄関
セイバー「あ……」
士郎「学校にいってくる」
セイバー「お気をつけて」
桜「行きましょう、先輩」
士郎「ああ……」
セイバー「……」
士郎「セイバー、あの……」
セイバー「……」スタスタ
士郎「……」
桜「先輩」
士郎「行こうか」
セイバー「……」
セイバー「いってらっしゃいませ……」
夜
士郎「セイバー、お風呂あいたから」
セイバー「はい」
士郎「……」
セイバー「おやすみなさい、士郎」
士郎「あ、ああ……」
セイバー「……」
セイバー「はぁ……」
セイバー「士郎……」
数日後 朝
士郎「……いってきます」
セイバー「お気をつけて」
士郎「……」スタスタ
セイバー「……」スタスタ
セイバー(もう殆ど口をきかなくなりましたね)
セイバー(主従関係でしかないのですから……当然ですが……)
セイバー「さてと……」
セイバー「……」
セイバー「……」ポロポロ
セイバー「あれ……」ポロポロ
セイバー「……」ゴシゴシ
セイバー「掃除をしましょう……」
セイバー「ふぅ……慣れてくると、この広い屋敷の掃除もすぐに終わってしまいますね」
セイバー「あとは……士郎の部屋ですね」
セイバー「……」ガラッ
セイバー「とはいえ……綺麗なのでどこを掃除していいやら……」
セイバー「そうです。今日はお天気もいいし、布団でも干しましょう」
セイバー「よっと……」
セイバー「あ……士郎の匂い……」
セイバー「……」クンクン
セイバー「はぁぁ……」
セイバー「……」クンクン
セイバー「……」
セイバー「……ちょっとだけ」
セイバー「……」モゾモゾ
セイバー「士郎の匂い……」
セイバー「……すぅ……すぅ……」
セイバー「すぅ……すぅ……」
ゲシッ!!
セイバー「わぁ?!」
イリヤ「……」
セイバー「な……!?」
イリヤ「主がいないからって昼寝とは……肝が据わった侍女もいたものね」
セイバー「どどど、どこから……!?」
イリヤ「裏口が開いてたわ。無用心ね」
セイバー「あぁ……」
イリヤ「……」
セイバー「あの……このとこは……」
イリヤ「最近、士郎と喋ってないんだって?」
セイバー「え?」
イリヤ「士郎から聞いたわ。どうして?」
セイバー「えと……私はメイドとして士郎に仕えると決心したからです……」
イリヤ「料理もできないくせに?」
セイバー「うぐ……」
イリヤ「貴女……本当に侍女に向いてないわ」
セイバー「料理はこれから―――」
イリヤ「違う」
セイバー「は?」
イリヤ「主の気持ちを察することもできない侍女は料理ができても掃除ができても、駄目なの」
セイバー「……」
イリヤ「家事をこなすことよりも、主のことを想う。それが侍女よ。今の貴女は料理もできない、掃除も中途半端、主も想えない最低の侍女なの」
セイバー「な……!!」
イリヤ「士郎の顔、ちゃんと見てる?」
セイバー「え?」
イリヤ「今にも海の底に向かっていきそうなほどくらーい顔してるのよ?」
セイバー「それは……」
イリヤ「何が原因か、わかる?」
セイバー「……」
イリヤ「あんたが暗い顔してるからよ」
セイバー「私が……?」
イリヤ「そして会話も最低限しかしてないんでしょ?」
セイバー「はい……」
イリヤ「はぁ……味付けも極端なら行動も極端なのね」
セイバー「……」
イリヤ「士郎は貴女と喋りたいし、ご飯も一緒に食べたいって想ってるのよ?」
セイバー「ですが……!!」
イリヤ「なに?」
セイバー「あの……士郎には将来を誓った人がいると……」
イリヤ「それで?」
セイバー「その……必要以上に親密になっては……士郎を困らせるだけだろうと……」
イリヤ「……ふふ」
セイバー「え?」
イリヤ「あーそれね。気にしなくていいと思うわ」
セイバー「そんなこと!?」
イリヤ「多分、士郎はそんな気ないと思うし」
セイバー「え……?」
イリヤ「いいから、これから士郎とはちゃんと会話すること」
セイバー「でも……」
イリヤ「好きになったならそれでいいじゃない。無理に気持ちを押しとどめることもないわ」
セイバー「いいのでしょうか……?」
イリヤ「誰を選ぶかは士郎だもん」
セイバー「イリヤ……」
イリヤ「はい!それじゃあ、家事を始める!!」
セイバー「は、はい!!」
イリヤ「居眠りしていた分、取り戻すのよ?」
セイバー「わかりました!!」
イリヤ「ふふ……」
―――数時間後
セイバー「お、おわりました……」
イリヤ「まぁまぁ、ね」
セイバー「あの……」
イリヤ「なに?」
セイバー「士郎の誓い人とは……?」
イリヤ「それは―――」
士郎「―――ただいま」
イリヤ「ほら、帰ってきたわよ」
セイバー「あ、えと……」
士郎「あ……」
セイバー「お、おかえりなさい……」
士郎「あ、ああ……」
セイバー「……士郎。おやつの菓子が切れましたので……その……一緒に買い物でも……どうでしょう、か?」
士郎「え……」
商店街
セイバー「……」
士郎「……」
セイバー(気まずい……何を喋ったら……)
士郎「セイバー?」
セイバー「は、はい!?」
士郎「……」
セイバー「……」
士郎「あのさ……その……」
セイバー「はい……」
士郎「俺……セイバーになにかしたかな?」
セイバー「え?」
士郎「その……セイバーはずっとなにかに怒ってるんじゃないかって……でも、見当がつかなくて……」
セイバー「士郎……」
士郎「悪いところがあったら直すから……その……機嫌なおしてくれないかな?」
セイバー「……いえ、違います」
士郎「違う?」
セイバー「全ては私が悪いのです」
士郎「セイバー?」
セイバー「貴方に仕えようと気負うばかりに、主に多大なる心労を与えてしまった」
士郎「そんなこと……」
セイバー「最低のメイドです」
士郎「セイバーは最低じゃない!!」
セイバー「士郎……」
士郎「掃除だって毎日隅々までやってくれてるし……普段気にしないような細かいところも……」
セイバー「……」
士郎「洗濯物も綺麗になってるし……それから……」
セイバー「ふふ……士郎?それはメイドとして当然のことでして……あまりそこばかりを褒められると……私が無能みたいで……悲しくなります……」
士郎「いや!!!そういうことじゃない!!だから……あの……なんていえばいいか……」
セイバー「……」
士郎「セイバーは傍に居てくれるだけで、俺が嬉しいんだ!!」
セイバー「は?」
士郎「あ……いや……えと……うん……そういうこと……なんだ」
セイバー「それは……あの……」
士郎「セイバー……これからは……一緒にご飯食べてくれ」
セイバー「……はい」
士郎「セイバーのこと、もっと知りたいし……見ていたいんだ」
セイバー「私もです……士郎」
士郎「料理は俺が作るから……セイバーは他のことをしててくれ」
セイバー「いいえ。いつかマスターの舌をうならせるぐらい、上手くなります」
士郎「それだとセイバーが完璧になるからなぁ……」
セイバー「完璧はだめですか?」
士郎「だって、一個ぐらいセイバーを補えるところがあれば、セイバーとずっと一緒にいても飽きないし、楽しいと思う」
セイバー「士郎……」
士郎「セイバー……」
プロポーズじゃねえか
衛宮邸
士郎「ただいま」
桜「おかえりなさい、先ぱ―――」
セイバー「士郎……」イチャイチャ
士郎「セイバー、すぐにおやつにするからな?」イチャイチャ
桜「……え?」
イリヤ「おかえりー、お兄ちゃん」
士郎「おう」
イリヤ「仲直りできたみたいね」
士郎「え、いや……」
セイバー「初めから仲違いなど起こしてません」
イリヤ「はいはい」
士郎「セイバーは座ってていいから」
セイバー「なりません。士郎こそ座っていてください」
桜「なんで……なにが……あったの……?」
セイバー「士郎、どうぞ」
士郎「ありがとう、セイバー」
桜「先輩?」
士郎「ん?」
桜「えと……」
イリヤ「駄目よ、桜。今は何を言っても無駄よ」
桜「そんな……」
士郎「どうかしたのか?」
セイバー「顔色がよろしくないようですが」
イリヤ「気にしないで。そろそろ帰るから」
士郎「もうか?」
イリヤ「ほら、桜。立ちなさい」
桜「いや……そんな……どうして……」
セイバー「あの……」
イリヤ「お幸せに」
桜タソかわいそう(´;ω;`)
夜
士郎「あはは」
セイバー「もう笑わないでください」
士郎「セイバーは綺麗なだけじゃなくてかわいいな」
セイバー「やめてください」
士郎「あ、そろそろお風呂にはいるか」
セイバー「そうですね」
士郎「先にどうぞ」
セイバー「滅相もありません!!」
士郎「いいから」
セイバー「そんな士郎から!!」
士郎「……」
セイバー「……」
士郎「そうだな。じゃあ、俺から入ろうかな」
セイバー「え、ええ……そうしてください」
士郎の自室
士郎「……」
トントン
士郎「セイバー?」
セイバー「はい……入ってもよろしいですか?」
士郎「うん」
セイバー「失礼します……」
士郎「どうしたんだ?」
セイバー「……」
士郎「セイバー?」
セイバー「あの……一緒に寝ても?」
士郎「な、なんでさ!?」
セイバー「あ、いえ……士郎がだめというなら……!!」
士郎「あ……うん……だめなことは、ない……」
セイバー「で、では……失礼します……」ゴソゴソ
士郎「……」ドキドキ
セイバー(士郎の動悸が伝わってくる……)ドキドキ
士郎(セイバー……いい匂い……)
セイバー「……あの」
士郎「な、なんだ?」
セイバー「とても……幸せです」
士郎「あ、ああ……俺も……」
セイバー「―――あの……士郎?」
士郎「ん?」
セイバー「士郎には婚約者がいると……聞いたのですが……」
士郎「……」
セイバー「あの……この幸福がとても怖いのです」
士郎「セイバー……」
セイバー「いつか崩れてしまうものなら私は……」
士郎「イリヤのことか……」
セイバー「え……イリヤが婚約者なのですか?」
士郎「ああ」
セイバー「でも……どうして?」
士郎「親同士が決めたことなんだ。一族のためとか、よくわかんないけど」
セイバー「それなら……士郎は……」
士郎「イリヤが昔さ、こう言ったんだ」
イリヤ『―――士郎が20歳になっても好きな人ができなかったら、結婚してあげる』
イリヤ『好きな人ができたらその人を幸せにしてあげること。私のことは保険とかそう言う風に考えてて』
士郎「イリヤは俺と結婚なんてしたくなかったんじゃないかな」
セイバー(違う……そんなことは……)
士郎「でも……もう……」
セイバー「え……?」
士郎「俺には好きな人……できちゃったし……」
セイバー「士郎……あの……」
士郎「セイバー……好きだ……」
セイバー「ししし、しろう!!ななな、なにをとつぜん……!!!」
士郎「いや……この状況なら……言えるかなって……」
セイバー「……こんな私を好きになっても……後悔するだけですよ?」
士郎「後悔なんてしない」
セイバー「え……」
士郎「俺はセイバーが傍に居てくれれば……いいから」
セイバー「料理……できませんけど」
士郎「俺がする」
セイバー「じゃあ……掃除は私がします」
士郎「洗濯は……当番制かな?」
セイバー「洗濯もします!!」
士郎「俺の仕事がなくなるんだけど」
セイバー「士郎は……美味しい料理を毎日つくってくれれば……」
士郎「そっか。がんばる」
セイバー「はい……」
数日後 朝
士郎「セイバー!!」
セイバー「はい」
士郎「行ってきます」
セイバー「いってらっしゃいませ」
士郎「うん……」
セイバー「……」
桜「先輩!!はやく!!」
士郎「あ、ああ、ごめん!!」
桜「セイバーさん!!」
セイバー「はい?」
桜「私は諦めてませんから!!!」
セイバー「いつでも受けてたちます」
桜「くっ……!!!なんて余裕なの……!!!!」
セイバー「お気をつけて」
昼
セイバー「む……もうマジック凛がないですね」
セイバー「新しいのを買いにいかないと」
イリヤ「―――ごめんあそばせ」
セイバー「イリヤ」
イリヤ「がんばってる?」
セイバー「あの……」
イリヤ「なに?」
セイバー「イリヤは士郎のことを……」
イリヤ「いいの。だって士郎が恋をしらないままで、私を好きだって錯覚されても嫌だもん」
セイバー「……」
イリヤ「そのかわり、士郎を泣かせたら……殺す」
セイバー「わ、わかりました……」
イリヤ「ふふ……さてと、ランチの用意でもしてくれるかしら?」
セイバー「は、はい!!ただいま!!」
夜
セイバー「はぁ……」
士郎「お疲れ様、セイバー?」
セイバー「いえ」
士郎「今日も一日、ありがとうございます」
セイバー「いえいえ……士郎のためですから」
士郎「あはは」
セイバー「ふふ」
士郎「じゃ、おやすみ」
セイバー「はい、おやすみなさい」
セイバー「……士郎?」
士郎「ん?」
セイバー「―――よい夢を」
END
乙
面白かったよ
>>1乙!!
おつおつ
お疲れ
乙
セイバーが幸せになってよかった
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