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〈::゚-゚〉行灯業者の鐘の声が聞こえるようです

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 03:16:53.46 ID:iCjWz4CL0
311 名前:
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2012/01/08(日) 03:05:58.76 ID:lJAHPLN5O
こんな時間だけどスレ立て頼んでいいかな

スレタイはそちらに任せる
ブーン系と分かるように、タイトルにはAAと「ようです」を付けてほしい
そのタイトルから即興で話を考えてながらで書いていく

お願いします











2 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 03:17:40.98 ID:kfp0ZcwEO
 鬼畜wwwwwwww












3 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 03:18:10.33 ID:sgWZWFiP0
 ワロタwwwww







説明

行灯










9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 03:29:10.51 ID:lJAHPLN5O

  灯りが欲しゅうございます

  ここは真っ暗でありまして

  灯りが欲しゅうございます

  照らす光を、どうか、私のために作っていただけますでしょうか



  そして、ああ、どうか、どうか、鐘を鳴らして





*****










12 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 03:37:57.71 ID:lJAHPLN5O

  ちりんちりん。

  鐘の音を聞き、内藤ホライゾンは外に出た。
  灰色の石の塊を見付け、小さく笑う。

〈::゚-゚〉

( ^ω^)「出来たかお」

  猫の姿をした石の塊は、右手に提げたものを内藤に突きつけた。
  竹の枠に和紙を貼りつけた──所謂、行灯というやつだ。

(*^ω^)「ありがとうお! これで今夜は明るいお」

〈::゚-゚〉

  内藤が受け取ったのを確認し、石は帰っていく。
  ずしん、という重い足音に、内藤は苦笑した。



*****









13 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 03:44:42.61 ID:5tViyMxT0
 日本昔話みたいな感じか




14 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2012/01/08(日) 03:46:23.65 ID:rrBwSALd0
期待支援








15 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 03:49:46.75 ID:lJAHPLN5O

  この世界の生き物は、暗いときには動けない。
  指一本も動かせなくなる。

  明るい昼の内なら何でもないのだが、夜になって一面真っ暗闇になると、
  皆、石のように固まってしまう。

  そういうものなのだ。

  とはいっても、仕事やら何やらを理由に、夜にも活動したいと言う者は多いわけで。

  そんな彼らのために、「明かり」を作ってやるのが──



〈::゚-゚〉 ズシン



  ──この、ぃしもやっている、行灯業者である。








19 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 03:58:10.37 ID:lJAHPLN5O

  ぃしが歩く度、左手にある小さな鐘がちりちりと鳴った。
  喋れない彼(『彼』か『彼女』かは分からないが)は、
  完成した行灯を客に持っていく際に、この鐘で来訪を知らせている。

('A`)「おっ、ぃしじゃねえか。今日も行灯持ってったのか」

〈::゚-゚〉 チリン

  自分の店まであと少し、というところで、知り合いの行灯業者に呼び止められた。
  肯定を示すため、鐘を一度大きく鳴らす。

('A`)「お前さんの行灯使うなんて、内藤ぐらいじゃねえのか?」

〈::゚-゚〉 チリチリ

  今度は二回。否定の意。

('A`)「ああ、ツンのとこもだったな。悪かった、怒るなよ」

〈::゚-゚〉 チリン












21 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 04:06:19.48 ID:lJAHPLN5O

 ('A`)「でも、その2人くらいだろ? お前のお得意様は」

〈::゚-゚〉 チリ……

  小さな音に、知り合い──ドクオが吹き出す。
  ぃしの3分の2程度の身長しかないくせに、ぃしに対する態度は大きい。

('A`)「しょうがねえさ。お前の行灯は下手くそだからな」

〈::゚-゚〉 チリチリ……

('A`)「内藤やツンが何度も行灯頼むのが、その証拠だ。すぐ駄目になっちまうんだよ」

〈::゚-゚〉 チリチリ……

  一応否定はしてみるが、ドクオの言うことは正しかった。
  石で出来ているぃしは、手を柔軟に動かせない。
  繊細な作業である行灯作りには向いていないのだ。









23 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 04:14:40.70 ID:lJAHPLN5O

  ならば何故、行灯業者などやっているのか。
  そんな疑問を抱くのも当然だが、それには「好きだから」としか答えるより他ない。
  和紙越しに漏れる柔らかな光が、そしてその光に喜んでくれる皆が好きだった。

('A`)「……っとと、暗くなっちまうな。じゃあな、早く家に戻れよ。
  お前が道端で固まってると、地蔵みたいだからよ」

〈::゚-゚〉 チリン

  はっとして、ドクオが自身の店に引っ込む。
  体が小さくて枝のような腕をしているくせに、行灯作りの腕は確か。
  技術が上等なら客も上等で、店も立派なものだ。

  ドクオの店を眺めた後、ぃしは再び歩き出した。
  日が沈み始めている。



*****






26 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 04:27:30.55 ID:lJAHPLN5O



 ('A`)「一緒に浦等さんとこ行かねえか」

  ある日の昼、ドクオがぃしを誘いに来た。

  浦等は近辺でも有名な金持ちだ。
  よく、ドクオが行灯を作ってやっていると聞く。
  どうして自分を連れて行くのだろうと、ぃしは首を傾げたい気分だった。

  それを察したか、ドクオは腕を組んで口を開く。

('A`)「お前を浦等さんに紹介してやるっつうんだよ。
  あの人は変わり者だから、お前を気に入るかもしれねえ。
  ほら、一番の自信作持って、ついてこい」

〈::゚-゚〉

〈::゚-゚〉 チリン

  態度は悪いが、こういう男である。







28 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 04:34:13.52 ID:lJAHPLN5O



 ( ・∀・)「やあやあ、いらっしゃい」

('A`)「頼まれてた品、持ってまいりました」

  案内された先は、とてもとても大きな屋敷。
  玄関の土間からして、随分広い。
  こうも大きいと住民ですら迷いそうだと思いながら、ぃしは家主の浦等モララーを見た。

  モララーはぃしに怪訝そうな目を向ける。

( ・∀・)「お地蔵さんかい?」

('A`)「行灯業者でございます」

( ・∀・)「ほう、ドクオ君の同業者か。……さてさて、ドクオ君、行灯を見せてくれないか」

('A`)「かしこまりました」








31 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 04:44:36.28 ID:lJAHPLN5O

  ドクオは式台に腰掛け、抱えていた風呂敷包みをモララーの前に出した。
  モララーがぃしに視線をやる。

( ・∀・)「彼……彼女? は、座らないのかい」

('A`)「あいつは石ですんで、座ったら板が割れちまいます」

(*・∀・)「ははっ、ああ、そうなのか。面白いね」

〈::゚-゚〉 チリン

  ドクオが風呂敷を広げた。
  そこにあるのは箱。
  蓋を取ると、一つの行灯が入っていた。

( ・∀・)「つけてもらっていいかね」

('A`)「ええ」

  ドクオは火皿に油を垂らし、火を灯した。
  行灯の中に入れれば、橙色の明かりが周りを照らす。

  おお、とモララーが声をあげた。





33 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 04:51:48.29 ID:lJAHPLN5O

(*・∀・)「いや、相変わらず、君の作る行灯は綺麗だね。
  夜になれば、一層美しく光るだろう」

('A`)「ありがたいお言葉。……おい、ぃし」

〈::゚-゚〉 チリン

  呼ばれ、ぃしはドクオとモララーの前に移動した。
  ドクオが、ぃしの持っている風呂敷を指差す。

  ちなみにこの風呂敷は、店を出るときに行灯を剥き出しのまま持っていこうとしたら、
  呆れたドクオに「せめて包め」と渡されたものだ。

('A`)「浦等様、こいつの行灯も見てやってはくれませんか」

( ・∀・)「ん? そうだね、石が作る行灯というのも気になるね」

('A`)「だとよ、ぃし、行灯出しな」

〈::゚-゚〉 チリン








34 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 05:04:27.07 ID:lJAHPLN5O

  風呂敷から行灯を取り出すと、モララーは一瞬言葉に詰まった。
  「なるほど」とようやく一言口にする。

( ・∀・)「うん、まあ……下手だね」

〈::゚-゚〉 チリン……

  何とまあ、正直な。

  鐘を一度鳴らす。
  モララーはドクオに鐘の意味を訊ね、答えを聞くと、嬉しそうに手を叩いた。

( ・∀・)「行灯は下手だが、面白い子だ」

〈::゚-゚〉 チリン

( ・∀・)「ええと、一回鳴らすのは」

('A`)「肯定です」

( ・∀・)「そうか。自覚があるんだね」

〈::゚-゚〉 チリチリ

( ・∀・)「二回は」

('A`)「否定ですね。さっきのは、ただの相槌みたいなもんでしょう」

( ・∀・)「面倒だな。面倒だが面白いよ」






36 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 05:15:21.10 ID:lJAHPLN5O

('A`)「行灯はいかがでしょう」

( ・∀・)「行灯はいらないけども」

〈::゚-゚〉 チリ……

( ・∀・)「やあ、落ち込んだね。分かりにくいんだか分かりやすいんだか……」

  笑って、モララーは懐から財布を出した。
  ぃしの行灯を引き寄せる。

( ・∀・)「仕方ない、買おうじゃないか。いくらだい」

〈::゚-゚〉

〈::゚-゚〉 チリチリ

( ・∀・)「遠慮するな」

〈::゚-゚〉 チリ……

  こんなものを買わせてしまっていいのだろうかと悩みつつ、ぃしは手で金額を表した。
  モララーが目を丸くする。

( ・∀・)「そんなに安いのかい? 行灯なら、もっと高くてもいいのに」

('A`)「この出来で高かったら、本当に誰も買わなくなりますって」













37 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 05:26:16.89 ID:lJAHPLN5O

 ( ・∀・)「しかしだね……それで生活出来るのかな」

〈::゚-゚〉 チリン

('A`)「こいつは石ですから、ものは食いません。
  行灯の材料買える金さえありゃいいんです」

〈::゚-゚〉 チリン

( ・∀・)「ははあ、なるほどね。まあ、まあ、折角来てくれたんだし、余分にあげよう」

  ぃしとドクオが、モララーから金を受け取る。
  ドクオは金額を確認すると、腰を上げた。

('A`)「どうもありがとうございました。またよろしくお願いします」

( ・∀・)「こちらこそありがとう。それじゃあ、気を付けて。暗くなる前に帰るんだよ」

('A`)「ええ、分かっておりますとも」

〈::゚-゚〉 チリン

  2人はモララーに見送られ、屋敷を出た。
  モララーが屋敷に戻ったのを確かめ、ドクオはにやりと笑う。

('A`)「やっぱ金持ちはいいな。惜しみなく金を出してくれる」

〈::゚-゚〉 チリ……






38 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 05:37:27.16 ID:lJAHPLN5O

 ('A`)「お前のことも気に入ったようだしな、もしかしたら浦等さんから注文が来るかもしれねえぞ」

〈::゚-゚〉 チリチリ

('A`)「そしたら収入が増える。お前はな、その金でいい材料を揃えるんだよ。
  腕が悪くとも、高価な材料使ってりゃ欲しがる馬鹿なんざたくさんいるぜ。
  そういう奴らに売っ払って、また金稼いで、高い行灯作るんだ」

〈::゚-゚〉 チリチリ

('A`)「……けっ。欲のねえ奴だな」

〈::゚-゚〉 チリン

  つまらなそうに言って、ドクオは肩を竦めた。
  別に、ぃしは儲かりたいわけではない。
  今まで通りの収入で構わないのだ。

  何歩か進み、モララーの屋敷を囲む塀がようやく途切れたところに差し掛かる。
  ふと横を見たぃしは、小さな家を見付けた。








39 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 05:46:04.79 ID:lJAHPLN5O

 〈::゚-゚〉 チリンチリン

('A`)「ん? ──ああ、あんなとこに家があんのか。
  塀のせいで日陰になってやがる」

  あそこに住んでる奴は大変だろうな、とドクオは言った。
  昼間まで暗かったら、そこにいる者は四六時中固まったままということになる。

  ドクオと同じことを考えていたぃしは、その家に向かおうとした。
  だが、ドクオに制止されてしまう。

〈::゚-゚〉 チリンチリン

('A`)「ばーか、あんな場所に住む奴なんかいねえよ」

〈::゚-゚〉 チリチリ

('A`)「いたとしても、とっくに何とかしてるって」

〈::゚-゚〉 チリン……









40 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 05:56:06.80 ID:lJAHPLN5O

  気にはなったが、「早く帰るぞ」と急かされたので、ぃしは大人しくドクオに続いた。
  帰宅する前に日が暮れてしまっては厄介だ。

  歩きながら、不意にドクオが空を見上げる。

('A`)「なあ」

〈::゚-゚〉 チリン

('A`)「最近、日が落ちるのが早くなってきたと思わねえか」

〈::゚-゚〉

〈::゚-゚〉 チリン

  言われてみれば、たしかに。
  昔に比べ、活動出来る時間が短くなってきた気がする。

('A`)「……やーな予感すんだよなあ」

  ドクオは頭を掻いて、呟いた。



*****







42 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 06:11:20.57 ID:lJAHPLN5O



( ^ω^)「次は、こういう行灯が欲しいお」

  数日後。
  ぃしの店に、内藤が行灯の注文をしに来ていた。
  和紙の色や大きさを指定する。

( ^ω^)「それで、持ち運べるものがいいお」

ξ゚⊿゚)ξ「私は枕元の……何だっけ」

( ^ω^)「有明行灯」

ξ゚⊿゚)ξ「それ。それが欲しいわ」

  先客のツンが、ぃしが並べた和紙から楽しそうに色を選ぶ。
  そんな内藤とツンを見つめ、ぃしは、複雑な気分になっていた。

  注文してくれるのは嬉しい。
  だが、きっと彼らがぃしに行灯を頼むのは、ここらの店で一番安いというのが理由だろう。

  彼らのためにも、もっと上手く作れたらいいのに。








43 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 06:20:20.30 ID:lJAHPLN5O

 ξ*゚⊿゚)ξ「あ、この色──」

( ・∀・)「失礼するよ」

  そこへ、意外な客がやって来た。

  モララーだ。
  きょとんとする内藤達に片手を挙げて挨拶し、店に上がり込む。

ξ゚⊿゚)ξ「浦等さんじゃありませんか」

( ・∀・)「おや、知っているのかい」

ξ゚⊿゚)ξ「そりゃあ有名人ですもの」

〈::゚-゚〉 チリン

  内藤とツンが慌てて場所を空け、モララーがそこに座った。
  店内に飾っている見本の行灯を一瞥する。

( ・∀・)「相変わらず下手だね」

〈::゚-゚〉 チリ……

(;^ω^)「うわあ、はっきり」







45 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 06:29:03.39 ID:lJAHPLN5O

( ・∀・)「でも今日はね、注文しに来たんだ。
  君の行灯、すぐに駄目になってしまってね」

〈::゚-゚〉 チリン

ξ;゚⊿゚)ξ「えっ」

(;^ω^)「浦等さんがぃしに行灯の注文を──っていうか既に行灯使ってたんですかお!?」

( ・∀・)「先日、ドクオ君からの紹介でね」

  町の中でも屈指の金持ちがぃしの店を訪れたことに驚愕する内藤達だったが、
  ぃしもまた、モララーの来訪に驚いていた。

  まさかドクオの言う通りになろうとは。

〈::゚-゚〉 チリン、チリン

  下手だと分かっていて、以前の行灯がすぐに駄目になって、
  それでどうしてまた買おうという気になったのか。
  不思議でならない。


46 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 06:40:16.73 ID:lJAHPLN5O

( ・∀・)「置行灯がいいな。色は君に任せる」

〈::゚-゚〉 チリン

( ・∀・)「ゆっくりで構わないから、出来上がったら持ってきてくれ。
  ああ、前金を払った方がいいかい?」

〈::゚-゚〉 チリチリ

( ・∀・)「そうかい。それじゃあね。楽しみにしているよ」

  手早く注文を終えると、モララーは店を出ていった。
  しばらくぽかんとしていた内藤達が我に返り、ぃしに振り返る。

(;^ω^)「すごいじゃないかお! 浦等さんに気に入られるなんて!」

ξ;゚⊿゚)ξ「ほっ、本当に、ぃしに頼みに来たのよね? 別の店と間違ってないわよね?」

〈::゚-゚〉 チリチリ


47 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 06:44:20.69 ID:lJAHPLN5O

  はあ、と、2人は感心したように息を吐き出した。

( ^ω^)「……ああいう金持ちには分からんと思ってたお」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ、私も。……やっぱりすごいわねえ、ぃし」

〈::゚-゚〉 ?



*****


48 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 06:55:10.60 ID:lJAHPLN5O



  何日か過ぎて。

  内藤とツンに行灯を届けたぃしは、ドクオから譲ってもらった箱に行灯を入れ、
  モララーの屋敷へ出向いた。

  玄関の前に立ち、鐘を鳴らす。

  しかし大きな屋敷ともなると、鐘の音など碌に聞こえないようで、
  たまたま縁側に出た家主が気付くまで、何度も何度も腕を強く揺する羽目になってしまった。



( ・∀・)「すまないね、そういえば君は喋れないのだった」

〈::゚-゚〉 チリン

( ・∀・)「君の手じゃ、戸を叩いたら壊れてしまいそうだしね」

〈::゚-゚〉 チリン













50 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 07:05:05.60 ID:lJAHPLN5O

  石なので痛みも疲れもないが、普通の人間だったら肩を痛めていたかもしれない。

  夜になる前に帰らなければいけないのだから、
  それほど必死になるのも仕方ないことだと理解していただきたい。

( ・∀・)「それで、これが行灯だね」

〈::゚-゚〉 チリン

  鐘を置き、風呂敷から箱を、箱から行灯を取り出す。
  ふむ、とモララーが唸った。

  試しに火を灯そうとするぃしを、手で制す。

( ・∀・)「いいや、夜につけるのを楽しみにしておくよ」

〈::゚-゚〉 チリン

( ・∀・)「さて、これはいくらかな」

  ぃしは、あらかじめ値段を書いておいた紙を差し出した。
  頷き、モララーが金を払う。
  先日同様、いくらか上乗せされていた。






52 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 07:11:46.69 ID:lJAHPLN5O

 〈::゚-゚〉 チリチリ

( ・∀・)「これは僕の気持ちだよ。行灯を作ってもらって感謝してるんだ」

〈::゚-゚〉 チリチリ

( ・∀・)「受け取ってくれないかな。あまり嫌がられると恥ずかしい」

〈::゚-゚〉 チリ……

  少し迷って、ぃしは、恐る恐る金を手にした。
  モララーが納得したような声で「よし」と言う。

( ・∀・)「寧ろ、それでも足りないくらいだとは思うんだけどね」

〈::゚-゚〉 チリチリ



*****


53 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 07:20:40.66 ID:lJAHPLN5O



  屋敷を後にしたぃしは、例の家を視界に収めると、足を止めた。
  今日も塀の作った陰の中にある。

  行ってみようか。やめようか。
  逡巡したが、やがて決心し、小さな家に近付いた。

〈::゚-゚〉 チリン

  戸の前で鐘を鳴らしてみる。
  返事は返ってこない。
  モララーの屋敷じゃあるまいし、聞こえないということはない筈だ。

  ドクオの言うように、空き家なのだろうか。

〈::゚-゚〉 チリン

〈::゚-゚〉 チリン、チリン

〈::゚-゚〉

「……誰ですか……」

〈::゚-゚〉 !


54 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 07:30:56.38 ID:lJAHPLN5O

  声がした。
  か細い声だ。

〈::゚-゚〉 チリン、チリン

  もう一度鳴らしたが、今度は何も返ってこない。

  暗闇で固まっているならば、声すら出せない筈。
  声の主は喋れたのだから、中には明かりがあるということだ。

  安堵して、ぃしは再び鐘を鳴らすと、その場を立ち去った。



*****







56 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 07:37:26.58 ID:lJAHPLN5O

#####



  音がいたしました。
  ちりんちりんと、鈴のような、軽やかな。

  猫か何かでございましょうか。

  何度か戸の前で鳴っていたかと思うと、
  正反対に、ずしずしと重たい音をたてながら離れていってしまいました。

  猫の足音ではなさそうでしたが、一体、何だったのでしょう。



#####


57 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 07:43:56.77 ID:lJAHPLN5O





〈::゚-゚〉

('A`)「……地蔵発見」

  真夜中。
  ぃしの眼前に行灯が突きつけられた。
  呆れたようなドクオの顔が、辛うじて確認出来る。

〈::゚-゚〉

〈::゚-゚〉 チリン

  硬直していた手が、ようやく動いた。
  一歩後ろに下がっていた右足を、左足の横につける。

  帰路の途中で日が暮れてしまったのだ。
  運悪く人通りの少ない場所だったので、誰にも気付かれないまま長いこと固まっていた。
  ドクオが来なければ、朝まであのままだったろう。






58 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 07:55:05.30 ID:lJAHPLN5O

('A`)「ったく、店にいないから嫌な予感がして探してみれば」

〈::゚-゚〉 チリンチリン

('A`)「……ほんと、夜が早くなったよな。 みんなも不安がってるぜ」

〈::゚-゚〉 チリン

  並んで歩く。
  ぃしを店まで送ってくれるらしい。

('A`)「ところで、浦等さんに行灯頼まれたんだって?」

〈::゚-゚〉 チリン

('A`)「どうだったよ。多めに金くれたろ?」

〈::゚-゚〉 チリン

('∀`)「ひゃひゃ、この調子で注文増えるといいな」












60 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 08:01:24.62 ID:lJAHPLN5O

 〈::゚-゚〉

('∀`)「そんで稼ぎまくってよ、職人雇え。
  それから──」

〈::゚-゚〉

('A`)

〈::゚-゚〉

(#'A`)「……あああっ、面倒くせえ!
  歩くの遅えんだよ、俺の歩調に合わせねえと行灯の光から離れちまうだろうが馬鹿!」ズカズカ

〈::゚-゚〉 チリンチリン



*****


61 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 08:19:11.35 ID:lJAHPLN5O



  ありがたいことにモララーから三度目の注文が入った。

  完成した品を早速屋敷に持っていく。
  今回は下女が玄関先で待機していたので、すぐに気付いてもらえた。


( ・∀・)「君の行灯ね、もっと長持ちしてくれるといいんだけどね」

〈::゚-゚〉 チリン

  箱の蓋を外しながらモララーが言う。
  それは、ドクオからも内藤達からも散々言われている。
  火事にならないのが不思議なくらいだ、とさえ。

( ・∀・)「まあ、刹那的なものと考えれば情緒も感じられるかな」

〈::゚-゚〉 チリン、チリン




 
62 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 08:27:20.89 ID:lJAHPLN5O



 〈::゚-゚〉

〈::゚-゚〉 チリン

  屋敷の外。
  ぃしは、またしても、あの家の前にいた。

  人がいると分かってしまうと、今度は「今日も無事でいるか」という不安が沸くのだ。

〈::゚-゚〉 チリン、チリン

「……この間の人……?」

〈::゚-゚〉 チリン

  いた。
  良かった。

〈::゚-゚〉 チリン













64 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 08:31:37.79 ID:lJAHPLN5O

 「どちら様?」

〈::゚-゚〉 チリン

  ぃしは喋れない。
  勝手に家に入り込むわけにもいかない。

  鐘を鳴らし、また、そのまま踵を返した。



*****











65 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 08:41:58.76 ID:CP8q1b6L0
 ふむふむ









66 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 08:44:09.96 ID:lJAHPLN5O

#####



  また、あの音がいたしました。

  初めは遠めの場所を横切っていって、しばらく経つと、戻ってきて。
  それから、この家に近付いてきました。
  きっと、音の主は浦等さんのお屋敷に用があって、そのついでに私のところに来たのでしょう。

  その先は、以前と同じ。
  戸の前で何度か鳴って、私が答えると去っていく。
  何だか、私の返事を待っているようでした。

  次に来てみたら、色々と、話しかけてみましょうか。



#####






67 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 08:53:48.65 ID:bnpBz6410
ほう





68 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 08:58:11.52 ID:lJAHPLN5O



  それから度々、モララーは行灯を注文した。
  浦等家の奉公人にドクオの行灯を与え、モララーはぃしの行灯を好んで使っているらしい。

  それを聞いたドクオは、ぃし本人を気に入っているものとばかり思っていたんだがな、と首を傾げていた。
  要するに「わざわざ下手くそな行灯を使う気が知れない」という嫌味だ。

  しかし、正直なところ、ぃしにもモララーの考えは分からなかった。
  こうして何度も行灯を買ったところで、金を無駄にしているだけな気がするのだが。


69 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 09:03:21.41 ID:lJAHPLN5O

  疑問に思いながらも浦等家に通う内、ぃしには楽しみが出来ていた。
  あの小さな家の住民との会話である。
  会話といっても、


「今日は晴れてますか」

〈::゚-゚〉 チリン

「そうなんですか。私は雨が好きなのですけれど、あなたは?」

〈::゚-゚〉 チリチリ

「あら、残念です」


  こんな風に、相手の言葉に鐘で答えるだけ。


70 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 09:11:41.21 ID:lJAHPLN5O

  数度にわたる「会話」で分かったのは、相手が女性であること、1人で暮らしていること、
  そして彼女は外に出ないということだった。

  外出しないのに、明かりはどうしているのだろう。
  日陰でも光が入ってくる場所があるのだろうか。

  訊きたい気持ちは募るが、ぃしは喋れないし、招かれない限りは対面出来ない。
  ただひたすら、彼女の問い掛けに鐘で答えていた。



「そろそろ帰らないと、日が暮れてしまいますね」

〈::゚-゚〉 チリン

「それでは、名残惜しいですけど、さようなら。……あの、今日も楽しかったです」

〈::゚-゚〉 チリン



*****






71 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 09:12:00.53 ID:hoaSdUp+0
 即興なのに面白いとな






73 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 09:19:41.68 ID:lJAHPLN5O

#####



  今日も来てくださいました。
  最近、ようやくあの音の意味を理解してきた気がします。

  はい、なら一回。いいえ、なら二回。
  ただの相槌でも一回。気分によっては二回。

  ……ややこしいです。

  一度、顔を合わせてみたいのですが。
  まだ恐くて、家の中に呼べません。



#####












76 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 09:38:48.70 ID:lJAHPLN5O





 ('A`)「そろそろお供えすんぞてめえ」

〈::゚-゚〉

〈::゚-゚〉 チリン

  店に帰る前に夜になってしまう日が増えた。

  理由は二つ。「会話」が楽しくてついつい長引かせてしまうことと、
  ──ますます、日が沈むのが早くなってきたこと。

  以前なら夕方と呼ばれるような時刻だったのに、今では夜中かと疑うほどに真っ暗だ。

('A`)「てめえは浦等さんとこ行くと、大抵夜までに帰ってこねえな。
  あの人ってそんなに長話するような人だったか?」

〈::゚-゚〉 チリチリ





79 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 09:47:03.42 ID:lJAHPLN5O

 ('A`)「んじゃあ、どっかに寄り道でもしてんのかよ」

〈::゚-゚〉

〈::゚-゚〉 チリン

('A`)「お、マジか。行灯作り以外に趣味がねえかと思ってたぜ。
  そんなに楽しいとこなら俺も連れてってくれよ」

〈::゚-゚〉

〈::゚-゚〉 チリチリ

('A`)「けち」

  ドクオを連れていけば、ぃしが訊きたいことを直接質問してくれるかもしれない。
  けれども、彼女と口の良くないドクオを話させるのは少々不安だ。
  何より、自分と彼女だけの秘密のような気がして、それを守りたかった。



*****






82 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 09:56:18.20 ID:lJAHPLN5O



 〈::゚-゚〉 チリン

「今日は、真っ直ぐここに来ましたね」

〈::゚-゚〉 チリン

「浦等さんのところに行かないんですか?」

〈::゚-゚〉 チリン

「……私と話すためだけに来てくれたんでしょうか」

〈::゚-゚〉

「あ、いえ、ごめんなさい、あの、」

〈::゚-゚〉 チリン

「……」

〈::゚-゚〉 ……チリン

  浦等家からの帰りの「会話」は手短に。
  それで話し足りないときは、翌日彼女のもとを訪ねることにした。
  こうすれば、日が暮れる前に帰れるし、手が空いているので夜道用の行灯も持てる。


83 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 10:00:17.37 ID:lJAHPLN5O

「ええと」

〈::゚-゚〉

「嬉しいです」

〈::゚-゚〉 チリン



*****






84 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2012/01/08(日) 10:03:19.70 ID:TluFIlcZ0
流石すぎる









85 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 10:05:04.66 ID:lJAHPLN5O

 #####



  お友達と呼んでいいのでしょうか。
  ああして誰かとお話するなんて、とても久しぶりです。
  お話と言えるかは怪しいのですけれども。

  一体どんな方なのでしょう。
  何をしている方なのでしょう。



#####






87 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 10:11:26.44 ID:lJAHPLN5O



  その日は、朝からどことなく、町中が騒がしかった。



(;'A`)「おい、ぃし!」

〈::゚-゚〉 チリン

(;'A`)「大変だぞ、とんでもねえことになってやがる!」

  店を開けていると、ドクオが息急き切って飛び込んできた。
  紙を握り締めている。

〈::゚-゚〉 ?

(;'A`)「この町からさっさと出ないと──、げほっ、……すまん、茶ァ一杯くれ。
  くそっ、こんなに走ったの久しぶりだ」

〈::゚-゚〉 チリン






96 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 10:49:43.91 ID:8h4B6BBXi

97 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 10:54:10.76 ID:saRKqtEM0

98 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 11:01:48.69 ID:8h4B6BBXi
 
99 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 11:02:22.48 ID:2YOZCSFVI

100 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 11:05:08.57 ID:EhZncJsCO










101 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 11:10:13.45 ID:lJAHPLN5O
 戻りました
保守ありがとうございます、再開します










103 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 11:12:45.12 ID:lJAHPLN5O

  ドクオは、ぃしが入れた温めの茶を一気に飲み干し、呼吸を整えた。
  ぐしゃぐしゃになった紙を広げて口を開く。

(;'A`)「最近、夜が長くなってきてたろ」

〈::゚-゚〉 チリン

(;'A`)「あれ、過去にも別の町で起きてたそうだ。
  何でも、数年周期に起こるある現象の兆候らしいんだが。
  その、ある現象ってのが問題でな」

〈::゚-゚〉 チリン

(;'A`)「──町が一つ、『夜』に覆われるんだとよ」

  真剣な表情で話すドクオ。
  ぃしには、彼の言葉の意味も、深刻さも、未だに分からない。

  それを悟ったのか、ドクオは床を強く叩いた。


(;'A`)「一日中『夜』に──真っ暗になっちまうんだよ!!
  それが一ヶ月以上続くのさ!」


〈::゚-゚〉

〈::゚-゚〉 チリ……





107 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 11:21:23.63 ID:lJAHPLN5O

 (;'A`)「どういうわけかは分からねえが、今年はこの町が選ばれちまった。
  だから、その日が来る前に早く逃げないといけねえんだよ」

  ドクオが、持っていた紙をぃしに手渡す。
  ぃしはどこか現実感を失ったような気分のまま、紙面に目を通した。

  粗方、ドクオが言っていたのと同じ内容だ。

(;'A`)「今までは、ずうっと遠く離れた町でばっか起きてたから、
  ここまで情報が流れるのが遅れやがったんだ。
  下手すりゃ十日後には、もう『夜』が来るらしいぞ」

〈::゚-゚〉

  ぃしは、壁に掛けてある見本の行灯を見上げた。
  たとえ町中が暗くなっても、行灯さえあれば、

(;'A`)「……行灯さえありゃ大丈夫、ってか?」

〈::゚-゚〉 チリン

(;'A`)「何かの拍子に明かりから離れちまったらどうする!?
  一ヶ月も固まったまんまだ。飯も食えない水も飲めない……そんなん死んじまう!!







113 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 11:32:37.75 ID:lJAHPLN5O

  そこまで言ったところで、ドクオは一旦口を噤んだ。
  溜め息をつく。

('A`)「……お前は飲まず食わずでも生きていけるもんな」

〈::゚-゚〉 チリン

('A`)「だがみんなは違う。
  金持ってる奴らは既に別の町に逃げる準備を始めてるぞ。
  貧乏人はどうだか知らねえが」

〈::゚-゚〉 チリン……

('A`)「お前、浦等さんからもらった金が随分溜まってるだろ。
  それで逃げろ」

〈::゚-゚〉 チリチリ

('A`)「……てめえがここに残って、うっかり固まっちまったとして。雨が降りゃどうなる?
  『夜』の間は天候が崩れやすいって話だ。
  一ヶ月──あるいはそれ以上の間、野晒しになってみろ。下手すりゃ壊れるぜ」

〈::゚-゚〉 チリ……








119 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 11:42:28.32 ID:lJAHPLN5O

 ('A`)「分かるか。ここに残っても、いいことなんざねえ。
  町を出るのが一番楽で、一番安全なんだ」

('A`)「どうしてもここに住みたいってんなら、夜が明けたときに戻ってくりゃいいだろ。
  ……まともな形で町が残ってくれてるかは怪しいけどよ」

〈::゚-゚〉

〈::゚-゚〉 チリン

  ドクオは、ぃしをしばらく睨んでいたが、もう一度溜め息をつくと、
  腰を上げて店の出入口へ歩いていった。

('A`)「早く決めろよ。時間がねえからな」

〈::゚-゚〉 チリン……



*****











123 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 11:52:18.95 ID:lJAHPLN5O



 ( ^ω^)「行灯くれるかお」

  昼頃、内藤がやって来た。
  ドクオや他の住人達とは違い、いつも通りの様子だった。

〈::゚-゚〉 チリン

( ^ω^)「ぃしは、いつ逃げるんだお? 明日にでも行った方がいいと思うけど」

〈::゚-゚〉 チリン……

  目の前に座る内藤を、じっと見つめる。
  行灯を眺めていた内藤は、ぃしと目が合うと、元々浮かべている笑みを、一層深くさせた。

( ^ω^)「僕は町に残るお。お金もなけりゃ、遠方の親戚もいないし」

〈::゚-゚〉

〈::゚-゚〉 チリチリ

  ならば、とモララーから受け取った金を引っ張り出そうとするぃしを、内藤は止めた。
  内藤の手がぃしの額を叩く。こつりと音がした。




128 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 12:03:14.15 ID:lJAHPLN5O

 ( ^ω^)「人の金で逃げる気はしないお」

〈::゚-゚〉 チリチリ

( ^ω^)「それに、僕はこの町を捨てられないお。
  ──馬鹿らしいと思うかもしれないけど、
  たとえ死ぬかもしれなくても、僕は、ここにずっといたいんだお」

〈::゚-゚〉 チリン、チリチリ……

( ^ω^)「ここを離れたら、『夜』が明けても、戻ってこれない気がするお」

〈::゚-゚〉 チリ……

  だから行灯を売ってくれ、と内藤は明るい声で言った。

( ^ω^)「僕が買える分だけくれお。
  なるべく丈夫で、なるべく安いやつ。ここにある中から適当に」

〈::゚-゚〉 チリン

  ぃしは、ありったけを内藤に差し出した。
  こんなには買えないと言う内藤へ向け、鐘を目一杯鳴らす。
  こんなときに金などいるものか。





132 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 12:15:49.66 ID:lJAHPLN5O

( ^ω^)「いいお。大した額じゃないけど、ぃしが逃げる金の足しにして──」

ξ#゚⊿゚)ξ「あ゙ーっ! 腹立つ! 荒巻死ね!!」

(;^ω^)「おわっ!?」

  そこへ、ツンが戸を蹴り破る勢いで入ってきた。
  物騒な発言に、ぃしと内藤はぎょっとする。

ξ#゚⊿゚)ξ「ん? あら、あんたも来てたのね」

(;^ω^)「ど、どうしたお、ツン」

ξ#゚⊿゚)ξ「どうしたもこうしたも!」

  内藤の隣にどっかと座り込み、ツンは巾着を床に叩きつけた。
  じゃらじゃらと金属音が響く。

ξ#゚⊿゚)ξ「町に残る人達でお金出して、たくさん行灯買おうって話になったのよ。
  荒巻んとこのは丈夫だって評判だから、私が代表して買いに行ったんだけど……」

ξ#゚⊿゚)ξ「あのジジイ、足元見やがって!! 有り得ない額吹っ掛けてきたわ!
  あんな行灯一個に全額注ぎ込むぐらいなら、ぃしの行灯大量に買ってやるっつうの!」








134 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 12:27:37.50 ID:lJAHPLN5O

 〈::゚-゚〉 チリチリ

  ツンの話から察するに、内藤のように残ることを望む者が何人かいるようだ。
  逃げなくていいのだろうか。

( ^ω^)「ツンも残るのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「残るわよ。金ないの知ってんでしょ。うちの母さんは足悪いし」

〈::゚-゚〉 チリ……

ξ゚⊿゚)ξ「──別に、残ったからって死ぬわけじゃないわ。
  用心して暮らせば、『夜』が明けるまで充分生きていられるわよ」

〈::゚-゚〉

  腕を組み、ツンはきっぱりと言い放った。
  不安など欠片も見せず、堂々と。

  内藤も彼女の横で頷いている。
  ぃしは何だか、2人を心配していた自分が恥ずかしくなった。











138 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 12:40:16.57 ID:lJAHPLN5O

 ξ゚⊿゚)ξ「んで、何か嫌な予感するんだけど、もう全部買っちゃった?」

( ^ω^)「ぃしが譲ってくれたところだお」

ξ゚⊿゚)ξ「うあー。ねえ、みんなで空いた長屋に住もうってことになったんだけど、
  あんたも来ない? その行灯持ってさ」

( ^ω^)「構わんお。僕の方にも2人ほど残りたいって奴らがいるから、
  それも一緒で良ければ」

ξ*゚⊿゚)ξ「余裕余裕。決まりね! じゃあ、この余ったお金で他のとこから買おうかしら。
  長岡なら結構安くしてくれるわよね」

  巾着を持ち直し、ツンは跳ねるように立ち上がった。
  先程の形相はどこへやら、微笑みを浮かべて振り返る。

ξ゚ー゚)ξ「良かった、ぃしの行灯が手に入って。
  絶対に一つは欲しいと思ってたの」

〈::゚-゚〉 ?

  何故だろう。
  下手で壊れやすくて、いいところといえば、安いというだけ。
  寧ろ、この緊急時には不要に思えるのに。





141 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 12:54:10.62 ID:lJAHPLN5O


ξ*゚ー゚)ξ「ぃしの行灯、光が柔らかくって優しくて安心出来るから、大好きだもの」


〈::゚-゚〉

ξ*゚ー゚)ξ「何か分かんないけど、他の人のと違うのよね」

( ^ω^)「同感だお」

ξ*゚ー゚)ξ「それじゃあ、さようなら、ぃし。行灯ありがとう。
  町に残るなら、西の方の長屋に来てね」

  行灯を抱え、内藤とツンが店を出ていく。
  閉められた戸を見つめていたぃしは、不意に後方を見ると、有り金を全て掻き集めた。


  彼らに必要なのは、金でも逃げ場でもない。



  光だ。



*****







144 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 13:06:45.51 ID:lJAHPLN5O



  ぃしは大量の荷物を床に下ろした。
  それらは木材や和紙など、行灯に使う材料。
  金を全て使って買い込んだものだ。

  日頃から贔屓にしていた仕入先ということもあって、あるだけ譲ってくれた。

〈::゚-゚〉

  すぐに作業に取り掛かる。

  作らなければならない。

  自分は不器用で、壊れやすいものしか作れないけれど。
  何度壊れたって大丈夫なように、たくさんの行灯を。
  皆が安心出来る光を。

  ──『夜』が、来る前に。



*****








152 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 13:24:32.45 ID:lJAHPLN5O

 『浦等さんはどうすんだろな』

『逃げるだろ、そりゃ』

『だが、あの人なら町中の行灯買い占めることだって出来らァな』

『そりゃあそうだろうがよ』

『行灯といやあ、あの石の……』

『ああ、鐘持った行灯業者か?』

『この間、ここでちりんちりん鐘鳴らしてんの見たが、ありゃあ何やってたんだ?』

『客に行灯運んできたんじゃねえのか。喋れないから鐘で呼ぶって聞いたぜ』

『ここって人住んでんのかよ』

『さあな』



#####




155 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 13:34:43.77 ID:lJAHPLN5O



 ( ・∀・)「行灯を作っているのかい」

  数日後、モララーが来た。
  返事をする間も惜しい。ぃしは手を止めず、一度だけモララーを見た。

( ・∀・)「すごい量だね」

〈::゚-゚〉

( ・∀・)「……頑張っているところ悪いが、どうか僕の行灯を一つ作ってくれないか」

〈::゚-゚〉

( ・∀・)「『夜』は五日後に来るそうだ。僕は、前日には町を出るよ。
  そのときに君の行灯を持っていきたい」

〈::゚-゚〉

( ・∀・)「──材料は置いていく。僕の分は一つだけでいい。
  もしも全て町の人のために使いたいというなら、それでもいい。
  気が向いたら、僕にも届けておくれ」


158 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 13:41:13.77 ID:lJAHPLN5O

  床に、どさりと何かを置く音。
  「頑張って」というモララーの声の後、戸が開閉する音が聞こえた。

  作業が一段落したところで、ぃしはモララーが置いていった材料を見遣る。

〈::゚-゚〉

  小さな山が出来ていた。

  呆れた。
  金だけでなくこんなものまで、こうも余分にくれるとは。

  表情が変えられたならば、きっと今、自分は笑っていただろうなとぃしは思った。



*****


159 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 13:49:28.87 ID:lJAHPLN5O



  勿体ないとは思いながらも、行灯を一つ使って、その明かりの中、ぃしは作業を続けた。
  ある程度作っては、少し遠くの長屋まで運び、店に駆け戻って再び行灯を作る。

  無茶はしないでね、とツンに言われたが、鐘を二度ほど鳴らして答えた。



〈::゚-゚〉

  ぃしは、石で出来ている。

〈::゚-゚〉

  石なので、食べ物も水もいらない。
  寝る必要もない。

〈::゚-゚〉

  石なので、痛みも疲れもない。


  自身の限界が分からない。


163 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 13:59:06.59 ID:lJAHPLN5O

 〈::゚-゚〉 パキリ

  腕に傷が出来ても。

〈::゚-゚〉 ピシリ

  足に罅が入っても。

〈::゚-゚〉 コキリ

  指が一本、欠けてしまっても。

  ぃしは行灯作りをやめなかった。
  ただでさえ不器用なのに、これではますます行灯が酷いことになってしまうな、としか思わなかった。

  モララーの分を作らなければ。
  明日には出てしまうらしいから、早く、早く。

  木材を取り落とす。
  腕を伸ばすと、ぃしとは違う手が、それを拾った。


('A`)「──ったく、てめえはよお」

〈::゚-゚〉

('A`)「俺の言うこと聞かねえ奴だな本当に」






168 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 14:11:05.59 ID:lJAHPLN5O

  ドクオは背負っていた荷物を置くと、ぃしとは少し離れたところに胡座をかいた。

('A`)「この間、浦等さんが来てたよな。大方、注文でもしに来たんだろ?
  まずは浦等さんに頼まれてたやつ作れよ。その間は俺が長屋の分を作るから」

〈::゚-゚〉

  てっきり、とっくに他所の町へ行っているものだと思っていた。
  器用な手で行灯を作り始めるドクオを、ぃしは呆然と眺める。

('A`)「ぼうっとしてる暇があったらさっさとやりな」

〈::゚-゚〉

  我に返って、モララーが用意した材料を手に取った。
  彼の好みそうな和紙を選ぶ。

('A`)「うちは奉公人もカーチャンも別の町に行ったよ。
  俺も続くつもりだったのに、ここの石頭が気になっちまっていけねえや」

〈::゚-゚〉

  これほど喋れないことを悔やんだのは初めてだ。
  「ありがとう」の五文字さえ言えやしない。
  文字にしようかと思ったが、見透かされていたようで、「いいから行灯作れ」と睨まれた。







170 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 14:22:24.90 ID:lJAHPLN5O

〈::゚-゚〉

('A`)

  黙々と行灯を作る。
  ドクオのものと自分のものを比べても、やはり彼の方が数段綺麗に見えた。

  ドクオに限らず、町の中の行灯業者は全員ぃしよりも技術的に勝っている。

  なのにモララーや内藤達は、ぃしの行灯を欲しがってくれた。

〈::゚-゚〉

  これまでにないほど、満たされている。
  指が欠けた手が、愛しく思える。

  この手が彼らを喜ばせたのだ。



*****





171 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 14:22:57.70 ID:iCjWz4CL0
まだやってたのかw








173 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 14:27:28.89 ID:8h4B6BBXi
>>171
お前の鬼畜スレタイがここまでの作品になった








178 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 14:31:18.54 ID:lJAHPLN5O



  夜が明けると、ぃしは店を飛び出した。
  一つの行灯が入った箱を大事そうに抱え、ひた走る。

  今や、日が出ている時間はごく僅か。
  モララーも間もなく出発するだろう。

  足が、罅の入ったところからぎしぎしと軋む。
  不快な振動が体に伝わる。

  けれども止まってはいけない。
  止まっている暇はない。



〈::゚-゚〉 チリン、チリン

( ・∀・)「──やあ」

  鐘を鳴らしながら屋敷の前に走る。
  そこで待っていたモララーが、ぃしを見付けて片手を挙げた。

  彼の周りに、荷を担いだ下男と下女が数人立っている。

( ・∀・)「今から出るところだったよ。……持ってきてくれたのかい。
  すまないね、貴重な時間なのに」

〈::゚-゚〉 チリチリ









180 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 14:38:35.30 ID:lJAHPLN5O

 ( ・∀・)「君、ぼろぼろじゃないか。大丈夫かい?」

〈::゚-゚〉 チリン

  箱を渡す。
  モララーは、そっと蓋を開け、静かに頷いた。

( ・∀・)「……本当にありがとう。僕は君の行灯が好きだよ。
  もっと早く知り合って、たくさん作ってもらえば良かった」

  半分だけずらしていた蓋を戻す。
  もう行かなければいけないね、と呟き、彼はぃしの手を握った。

( ・∀・)「僕はいずれ戻ってくるつもりだ。
  そうしたら、また行灯を作ってくれるかな」

〈::゚-゚〉 チリン

( ・∀・)「それまできっと、無事でいてくれよ」

〈::゚-゚〉

〈::゚-゚〉 チリン





183 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 14:43:50.58 ID:lJAHPLN5O

  「旦那様」とモララーが下女に呼ばれた。
  モララーは返事をし、ぃしから手を離す。

( ・∀・)「一旦、さようなら。また会おう」

〈::゚-゚〉

  モララーが背を向けた。
  奉公人達と共に歩き出す。

〈::゚-゚〉 チリン

  ぃしは、一度、力強く鐘を揺らした。




184 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 14:48:51.05 ID:lJAHPLN5O



  屋敷を離れ、小さな家に駆け寄った。

  いくら何でも町を出るか長屋に避難したとは思うが、もしかしたらということもある。
  戸の前に立って、ぃしは鐘を鳴らした。

〈::゚-゚〉 チリン、チリン

「……やっと来てくれた」

〈::゚-゚〉 チリン

  か細い声。
  ──まだ、いるのか。

  まさか『夜』のことを知らないのでは、と不安が迫り上がる。

〈::゚-゚〉 チリン、チリン、チリン

「……行灯業者様」

〈::゚-゚〉 チリ……

「あなた、行灯業者様でいらっしゃいますか?」





189 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 14:58:24.68 ID:lJAHPLN5O

  少し驚いた。
  どこで知ったのだろう。

〈::゚-゚〉 チリン

「……やはり、そうなのですね」

〈::゚-゚〉 チリン

「光を作ってくださるあなたと出会えたのも、きっと何かの縁でございます」

  どうか私のお願いを聞いてはいただけませぬでしょうか。

  前々から丁寧な物言いをする人だったが、いつも以上に畏まった口調の彼女に、ぃしは戸惑った。
  逡巡し、鐘を鳴らす。

  ほっと息をつく気配がした後、彼女の声が再び聞こえだした。

「灯りが欲しゅうございます」

〈::゚-゚〉 チリ……

「ここは真っ暗でありまして──だから、灯りが欲しゅうございます。
  照らす光を、どうか、私のために作っていただけますでしょうか」







193 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 15:06:24.53 ID:lJAHPLN5O

  真っ暗?

  ぃしは彼女の言葉を理解しようとしたが、考えれば考えるほど混乱した。

  家の中が真っ暗ということだろうか?
  ならば動けないし、こうして話せる筈がない。

  話が出来るけれども、周りは暗闇。
  目が見えないという可能性はどうだ。
  いや、ならば流石に本人も気付くだろう。

〈::゚-゚〉

「待っています。行灯が出来ましたらば、どうかここまで運んで、鐘を鳴らしていただきたいのです」

〈::゚-゚〉

「……無理なお願いでしょうか」

〈::゚-゚〉 チリチリ

「作っていただけますか?」

〈::゚-゚〉 チリン






194 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 15:10:06.32 ID:lJAHPLN5O

  理屈は分からないが、行灯を持って来さえすれば何かしら判明するだろう。
  ぃしは数回鐘を揺らし、彼女の言葉を待たずに走り出した。

  そろそろ帰らなければ、日が落ちる。



「行灯業者様、私、待っていますから──」



*****





198 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 15:19:35.10 ID:lJAHPLN5O



('A`)「帰ったか。さあ、明日に備えて行灯作りといくぜ」

〈::゚-゚〉 チリン

  何とか夜になる前に店に辿り着いた。
  腰を落ち着け、すぐさま作りかけの行灯を取る。

  材料はまだまだ残っている。
  明日からは、長屋の行灯の傍で新しい行灯を作ろう。
  ドクオのおかげで耐久性のあるものもいくつか出来たが、まあ、備えあれば憂いなしというやつだ。

〈::゚-゚〉

  ふと、糊を塗る手を止める。
  彼女のために行灯を作らないといけない。

  手に提げるものの方がいいだろうか。
  それを持って彼女のところへ行き、長屋へ連れていく。それがいい。











200 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 15:27:50.88 ID:lJAHPLN5O

 ('A`)「……ぃし」

〈::゚-゚〉 ?

('A`)「お前、大丈夫だろうな」

  突然問い掛けてきたドクオの目は、ぃしの手足に入った亀裂に向けられている。
  左手を握ったり開いたりして、大丈夫だと意思表示した。

('A`)「今日ぐらい休んでもいいんじゃねえか」

〈::゚-゚〉

  その呟きは無視して、ぃしは和紙に視線を落とした。
  どれにしようか。

  彼女のことを考えながら、薄桃色の和紙を拾い上げた。

('A`)「……ぶっ壊れても知らねえからな」



*****






201 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 15:33:48.05 ID:lJAHPLN5O

 #####



  あの方は行灯業者様でございました。

  私のために行灯を作ってくださると仰った。

  ああ、やっと、この暗闇から抜け出せる。

  あの方が、照らしてくれる。



#####








204 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 15:41:06.90 ID:lJAHPLN5O



  日の光が差し込んだ。
  ぃしとドクオが顔を上げる。

  彼女のことは、夜の内に文字で説明しておいた。
  ドクオは目を擦りながら、ぃしの傍らにある行灯をもう片方の手で指差した。

('A`)「……行ってこい。
  今日はいつもより一層早く日が暮れる」

〈::゚-゚〉 チリン

('A`)「他の行灯と材料は俺が長屋に運んどくから、その女連れ出したら真っ直ぐ長屋まで来いよ」

〈::゚-゚〉 チリン、チリン

('A`)「そら、急げ」

  行灯や鐘を抱え、ぃしは浦等家方面へ向かった。
  昨日よりも強い振動を感じる。







203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 15:37:35.02 ID:IMRQtyS70
 できればリアタイで最後まで見届けたかったけど俺はここまでのようだ
ラストまでがんばってくれ

最後の支援
boonpic2_144









207 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[>203ウヒョーありがとうございます!]:2012/01/08(日) 15:46:53.36 ID:lJAHPLN5O

  みしみし、ぎしぎし。
  足が、腕が、軋む。


  彼女は喜んでくれるだろうか。


  ぴしぴし、ぱきぱき。
  罅が増え、裂け目が深くなる。


  内藤達のように安心してくれるだろうか。


  みしみし、ぎしぎし。
  ぴしぴし、ぱきぱき。


  喜んで、ありがとうなんて言ってくれたら、どんなに嬉しいだろう。







210 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 15:57:46.64 ID:lJAHPLN5O

 〈::゚-゚〉 !

  がくりと体が揺れ、ぃしは転んだ。
  咄嗟に行灯を頭上に掲げる。
  まだ油を垂らしていなくて良かった。

〈::゚-゚〉

  立ち上がろうとして、違和感。
  行灯と鐘を地面に置き、体を引っくり返す。

  左足、股の辺りから先が遠くにあった。

  ついに足が駄目になってしまったようだ。

  足をくっつける方法を考えるよりも、一歩でも前に進まなければ。

  日が暮れてしまう。
  手伝ってくれたドクオや、長屋で待っている内藤達に心配をかけたくない。

  明かりが欲しいと言った彼女を、早く安心させたい。







215 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 16:07:51.44 ID:lJAHPLN5O

 〈::゚-゚〉

  行灯と鐘を左腕に抱え、地面を這う。

  あとどれくらいで日は沈むのだろう。
  あとどれくらいで彼女のもとに辿り着くのだろう。

  右肩が激しく軋む。
  視界が一瞬暗くなる。

  今まで限界など知らずに生きてきた。
  痛みも疲れも無縁なものだった。

  なのに、今になって、それらが歩み寄ってくる。



  あとどれくらいで、自分はただの石になるのだろう。



*****





221 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 16:18:43.63 ID:lJAHPLN5O

 #####



  ずっと、ずっと、恐かったのです。

  光を手にするのが。
  照らされるのが。
  恐かったのです。

  自分が恐ろしかった。
  「それ」を知るのが恐ろしかった。

  だから暗闇の中、ひたすら、じっとしておりました。

  ずっと、ずっと。


  けれども行灯業者様が私と話してくださいました。
  常に不安に怯えていた私を、楽しませてくださいました。

  あの方が照らしてくれるならば、私は、きっと。






222 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 16:21:59.78 ID:lJAHPLN5O

  ……。

  音がします。
  ずりずりと這いずるような。
  それに混じる、軽やかな。

  音は、ゆっくりと時間をかけて近付き、戸の前で止まりました。



  ──ちりん、ちりん。



  ああ。
  あの方の声。

  行灯業者様の、鐘の声が聞こえる。








226 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 16:28:11.95 ID:lJAHPLN5O


「行灯業者様」

  ちりん。

「もう、行灯を持ってきてくださったのですか」

  ちりん。

  いつもより、低い位置から聞こえる気がします。

「……行灯業者様」

  ちりん。

「私は、ずっと昔からここに住んでおります」

  ちりん。

「母と2人きりでございました」

  ちりん。

「ここは暗くて、昼間でも灯りがなくてはいけませんでした」

  ちりん。






229 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 16:36:33.04 ID:lJAHPLN5O

 「家にいる間は火を絶やしてはならぬと、母も私も気を遣っておりました」

  ちりん。

「……けれども、ある日、母が病気で亡くなりまして」

  ……。

「私は悲しみに暮れ、ぼうっとしたまま時を過ごしていました」

  ……。

「そして、ああ、何て馬鹿なのでしょう。
  すっかり行灯のことを忘れ、真夜中に油を切らしてしまったのです」

  ちりん。

「母はいません。私一人だけ。動けなくなって、何日も何日も転がっていました」

「お腹が減っても喉が渇いても、何も出来ません」

「家の近くを誰かが通っても、声が出せないから助けも呼べませんでした」

  ちりん、ちりん。






232 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 16:48:51.90 ID:lJAHPLN5O

 「あの苦しみといったらありません」

「けれど、ある日、ふっと楽になりました」

「正確に言いますと、急に眠くなりまして、次に目を覚ましたら
  空腹も喉の渇きも何もかも消えていたのです」

  ……。

  ちりん。

「それでも体は動かせませんでしたが、声は出ました。
  はっきりと自分の耳で聞きましたもの。今も聞こえていますよね?」

  ちりん。

「私、必死で叫びました。誰か来てくださいって」

  ちりん。

「でも誰も来てくれません」

「家の前を通る人に声をかけても、誰も気付きません」

  ちりん、ちりん。






















234 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 16:56:58.57 ID:lJAHPLN5O

「行灯業者様だけなのです。私の声を聞いてくださったのは」

  ちりん。

「……もしかして、って、ずっと思っていました」

「もしかして私は、……」

  ……。

「──死んでしまっているのではないかと」

  ……。

「何年も水を口にしないで、生きていられる筈がありません」

「あんなに声をかけたのに誰も気付かない筈がありません」

「そうすると今度は、その戸を開かれることが恐くなりました」

「誰かが灯りを持ってやって来たら。私を照らしてしまったら。
  私は、全てを知ってしまう」

「それが恐くて堪りませんでした」








237 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 17:02:33.30 ID:lJAHPLN5O

 「でも、行灯業者様、あなたは私の声に気付いてくださった」

「そしてあなたは灯りを作ってくださる方だった」

「きっと──こうなるべきだったのでしょう」

  ……。

「お願いします、行灯業者様」



「戸を開けて、私を照らしてください」





  ちりん。





242 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 17:14:04.16 ID:lJAHPLN5O

  かたかた、向こうで何かをする音がします。
  行灯に火をつけているのでしょうか。
  それから少しして、ぎいぎいと悲鳴をあげながら、戸が開かれていきました。

  辛うじて見える空は赤色。
  今はまだ、昼になった頃だと思っていたのですが。

  夕日が僅かに家の中に入り込みましたが、奥にいる私には届きません。

  すると、ずりずり、何かが這ってきました。

  夕日よりも柔らかくて、優しい、ほのかな赤色に照らされたもの。

〈::゚-"〉

  猫の形をした、石の塊。

  耳や手足が欠け、顔が削れ、あちこち土にまみれています。
  行灯が倒れないようになのか、それとも動きづらいだけなのか、
  慎重に、ゆっくり、こちらに向かってきました。








246 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 17:23:50.64 ID:lJAHPLN5O

  ぼろぼろの右腕は、肩が随分と抉れていて、軽く押したら取れてしまいそう。

「行灯業者様」

〈::゚-"〉

  鐘は外に置いてきたのでしょうか、何も答えてくれません。

「元から、そんなお姿だったのですか」

〈::゚-"〉

  答えないまま、行灯業者様は私のもとにやって来てくださいます。

「それとも、ここに来る途中で、そんなにぼろぼろになられたのですか」

〈::゚-"〉

  肯定も否定もありません。
  しかし、きっとそうなのだろうと確信していました。

  申し訳なくて、でもそこまでして来てくれたのが嬉しくて、私は口を噤みました。

  ああ、こんな気持ちなのに涙が出ないなんて、やはり、私は。





250 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 17:31:39.18 ID:lJAHPLN5O

  行灯業者様は、すぐ目の前まで来ると、その場に止まりました。
  右手を上げて、行灯を私に差し出します。

  とても不格好な行灯です。
  けれど、内側から照らす光の、何と美しいこと。

  こんなに綺麗な光があるだなんて。
  こんなに優しい光があるだなんて。

〈::゚-"〉


  まるで、この方みたいではありませんか。








253 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 17:41:22.73 ID:lJAHPLN5O

  私が照らされる。
  私の姿が見える。

  光に照らされて出来た影の中に、不安が逃げ込む。
  あんなに恐れていたことが、あっさりと消化されていく。

  行灯業者様。


「──ありがとうございました」


〈::゚-"〉

  行灯を床に置くと同時に、行灯業者様の右腕が転がり落ちます。

〈::゚-"〉


  影の角度のせいでしょうか。


〈::゚ー"〉


  私にはそのとき、行灯業者様の口元が、微笑みを浮かべたように見えました。







255 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 17:42:35.46 ID:lJAHPLN5O



 #####

















259 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 17:47:43.35 ID:lJAHPLN5O










  夜が明けた。



('A`)

  ドクオは、浦等家の隣家に来ていた。

  開かれた戸の前に、見覚えのある鐘が落ちている。












263 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 17:57:00.56 ID:lJAHPLN5O

  家の中を覗き込む。暗い。
  念のためにと持ってきておいた行灯に火をともし、足を踏み入れる。

('A`)「……ぃし」

  骨の傍に横たわる、石の塊。
  引っくり返して顔を照らす。

〈:: - 〉

('A`)「ぃし、おい」

〈:: - 〉

  行灯の光を与えて呼び掛けても、反応はない。
  答えない。

  真ん中辺りまで残っている左腕や、膝から上は存在している右足も、ぴくりとも動かない。





269 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 18:04:43.46 ID:lJAHPLN5O

 ('A`)「……」

  傍らの骨を見る。
  これが、例の女か。

('A`)「……ぃし、また後で来るからな」

  内藤達を呼んでこよう。
  この無駄に重い知り合いと、無駄に軽そうな女を埋めてやらなければ。

  ツンに何て説明しようか。一ヶ月間、ぃしの心配ばかりしていた。
  どう話しても号泣するだろうが、まあ、内藤に泣き止まさせるしかあるまい。

('A`)「ったくよ……」

  ぃしに文句を言いたい。
  聞いてくれる者がいない。








275 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 18:12:02.30 ID:lJAHPLN5O

('A`)「俺の下らねえ話も聞いてくれなくなっちまったじゃねえか。
  ああ、くそ、浦等さんに何て言やいいんだよ。
  馬鹿野郎め」

  独りごちながら、家から出る。
  ドクオは塗装が剥げてみすぼらしくなった鐘を見下ろすと、そっと拾い上げた。


('A`)「……形見として──じゃねえや。
  罰として、この鐘は貰っとくぜ」


  鐘を揺らす。

  こうすれば、ほら。












276 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 18:12:50.32 ID:lJAHPLN5O





 〈::゚-゚〉行灯業者の鐘の声が聞こえるようです














289 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 18:18:27.01 ID:ULfhZTCMO
本当にお疲れ様でした
面白かったよ







296 :
以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/01/08(日) 18:26:23.59 ID:8h4B6BBXi
 やっぱり穴本か
好きすぎて文体で分かるわ

お前の頭ん中どうなってんだ
どうやったらそんなホイホイストーリー出てくんだよ











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